「正誤辞典」とは一種の「語法辞典」ですが、特に、こういう言い方はできる、これは不自然、これは文法違反、という説明の仕方を行う辞典を集めてみました。
いずれの辞典もまず例文を挙げて、こういう言い回しは間違い、こっちが正しい、と解説してあるので、くわしい文法用語がよくわからなくても、特に英作文の場合には充分参考になります。
できあがった英文を読んでみて、この表現は英語としては不自然かなと疑問に感じたとき、「正誤辞典」を引いてみると、正しい用法か間違いかがはっきりし、英語として自然な別の表現が見つかるかもしれません。
日本語の場合で考えてみると、たとえばテレビを見ていて司会者が不自然な表現を使うと、見ているこっちは理屈抜きで「あ、言い間違えた」と感じることがほとんどでしょう。なぜ間違いなのかはなかなか説明できませんが、一人が間違いであると感じたらその他の大勢の人も同じく「あの司会者の日本語は変だった」と感じます。
「正誤辞典」はそういった「間違えた英語表現」をたくさん集めて、「正しい英語表現」に訂正してある辞典です。
全体を文法項目で分類してあり、目次を見ると、「名詞・名詞句、動詞・動詞句・助動詞、副詞・副詞句、前置詞」と分けているので、いわゆる「文法参考書」とよく似ています。
各項目はさらに細分化して、「同格の名詞句、数量詞(all、 any、both、など)、副詞との共起(どの副詞と一緒に使えるか)、時制」などの項目が登場します。解説文はたいていまず、一般的にどういうときにどういう構文や語句が使えないか、結論から提示します。次に実例として、文法的に正しい例文、微妙な例文、間違った例文を列記します。
目次には「等位構造、外置、分裂文」などややむつかしい専門用語が出てきますが、巻末の索引を見て語句から調べていけば、目次の専門用語の意味がわからなくても充分に使えます。
見出し | 日本語:文法項目別(名詞、動詞、時制、否定、副詞節など) |
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索 引 | 日本語:文法項目別(名詞句、二重否定、目的語+補語など) 英語:アルファベット順(語句) |
その他 | 参考文献、引用文献の記述あり 簡単な用語解説集あり(主に変形文法) |
事実上、上記の「英語正誤辞典」[1986]の改訂新版と言えるものです。
内容は全体が二部に分かれ、第1部では「品詞・句・節の用法」を扱い、さらに名詞、動詞、助動詞、時制、形容詞、副詞などの項目に分けて、正しい表現、間違った表現、不自然な表現などがまとめられています。
第2部では「文の構造と意味」を扱い、「文」についての正誤表現がまとめられています。内容は、as 構文、there 構文、wh 疑問文、関係詞節、倒置など。
見出し | 日本語:文法項目別(名詞、動詞、時制、否定、副詞節など) |
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索 引 |
日本語:文法項目別(名詞句、二重否定、目的語+補語など) 英語:アルファベット順(語句) |
その他 | 参考文献、引用文献の記述あり 簡単な用語解説集あり(主に変形文法) |
見出し語はほとんどが一語の単語で、アルファベット順に並び、体裁は語法辞典ですが、解説文は、英語として正しい表現はどれか、間違った表現はどれかについて主眼を置いています。
名詞なら冠詞が付くのか付かないのか、複数で使うのか単数で使うのか、どういった前置詞が結び付くのか、動詞ならどんな構文を作るのか、どんな前置詞が後に続くのかなど、日本人が誤りやすい使用例を示して、どこがどう間違いなのか指摘し、文法的に正しい文を見本として明示しています。
解説文は英語史や語源の研究など歴史的考察を取り入れたものもあり。昔はそう言ったが今はそうは言わない、といった説明方法が随所に登場。話し言葉にも焦点が当てられ、同じ単語でもイントネーションによって大きく意味が異なる例なども紹介しています。
日本語表現との比較対照についても解説が豊富。日本語ではこれで自然な表現だが、英語では違う、といった説明もたくさんあります。学校で教わる似たような語句や構文についても、微妙なニュアンスの違いを例文を交えて詳細に解説しており、高校生にもお薦めの一冊です。
見出し語には"Relative"(関係詞)、"Stress"(強勢)、"Sequence of tenses"(時制の一致)、"Indirect narration(間接話法)などの文法事項もあります。正しい英文、間違った英文のリストアップにとどまらず、通常の語法辞典の特徴も兼ね備えています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 参考文献の記述あり |
書名に「診断」とありますが、一種の正誤辞典です。語、句、センテンスなどの見出し語がアルファベット順に並び、通常の英和辞典を引く感覚で使えます。見出し語の次には「正しい使い方」「間違った使い方」「避けるべき使い方」となる例文を提示して、解説が続きます。
調べる語句が見出し語になくても、巻末に総索引があるので、本文中に一か所でも記述がある語句なら探し出すことが可能です。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 巻頭に「英語における日本人共通の誤り」の記述あり |