意外なことに、英英辞典で熟語や慣用句の意味を調べようとすると、目指す熟語や慣用句そのものがしばしば載っていません。広辞苑サイズの巨大英英辞典を引いても、見つからない熟語や慣用句はたくさんあります。
……じゃ、どうやって熟語や慣用句の意味を調べるかというと、実は欧米では、専門の熟語辞典、慣用句辞典というものがたくさん編纂されています。もちろん、見出し語は熟語、慣用句、連語、など二つ以上の単語がひとまとまりになって、独自の意味を持つものばかりです。
このタイプの辞典の中には"Phrasal Verbs"という用語を書名にした辞典がたくさんあります。日本語では「句動詞」と訳すことが多いようです。「句動詞」とは、熟語の中で特に「動詞+副詞」や「動詞+前置詞」「動詞+副詞+前置詞」の形で使われるものを指します。"wake up"や"look at"、"look forward to"などですね。
句動詞(phrasal verb)を1万2,000以上集めた辞典です。事実上、"Longman Dictionary of English Idioms" [1979]とペアになります。簡単ですぐに意味がわかる2,000語で、すべての定義文と例文を記述。実際に読んでみても、語義説明や例文に出て来る単語の意味がわからずに戸惑うことはほとんどなく、高校生にもお薦めの一冊です。
副題にある通り、見出しは「動詞+副詞」や「動詞+前置詞」のように二語からなる句動詞(phrasal verb)が中心。実際には、「動詞+副詞+前置詞」のように三語からなる句動詞(phrasal verb)や、"give up the ghost"(途中でやめる)や"bite one's tongue off"(失言を後悔する)などのような熟語(idiom)も収録しています。ただし、熟語(idiom)の登録数はさほど多くはありません。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 巻頭に"Phrasal Verbs"の解説あり |
熟語(idiom)を集めた辞典です。事実上、上記の"Longman Dictionary of Phrasal Verbs" [1983]とペアになります。句動詞(phrasal verb)以外の熟語(idiom)を4,500以上収録。例文は6,000を超えます。例文の多くは小説の一節や新聞、雑誌の記事などから採録しています。
この辞書も"Longman Dictionary of Phrasal Verbs" [1983]と同じように、すべての定義文は、簡単ですぐに意味がわかる2,000語で記述。例文にはこの2,000語から外れる語句がチラホラ出て来ますが、さほどむつかしいものは見当たらず、意味をつかむのに苦労することはほとんどないと思われます。
【引用:"Longman Dictionary of English Idioms" Thomas Hill Long [Longman 1979]、84頁から、和訳は筆者】"die like a dog"(惨めな死を遂げる)
【引用:"Longman Dictionary of English Idioms" Thomas Hill Long [Longman 1979]、90頁から、和訳は筆者】"bite/kiss the dust"(死ぬ、病気になる)
【引用:"Longman Dictionary of English Idioms" Thomas Hill Long [Longman 1979]、217頁から、和訳は筆者】"at the mercy of"(〜のなすがままの、〜の言いなりの)
【引用:"Longman Dictionary of English Idioms" Thomas Hill Long [Longman 1979]、277頁から、和訳は筆者】"all roads lead to Rome"(すべての道はローマに通ず【諺】)
諺などの故事成語も見出しとして載っています。また、語源を紹介しているものもあり。たとえば、上記の"bite/kiss the dust"(死ぬ、病気になる)は――
【引用:"Longman Dictionary of English Idioms" Thomas Hill Long [Longman 1979]、90頁から、和訳は筆者、一部編集】戦場で兵士が致命傷を受けて、うつ伏せで地面に倒れている様を描写したもの
――という語源を明記しています。この場合、"dust"は「地面、地表を覆う砂ぼこり、砂塵」という意味です。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 巻頭に"Idiom"についての解説あり |
上記の"Longman Dictionary of English Idioms" [1979]の日本語版です。原著に大幅な加筆編集を行って、より日本人学習者向けの内容になっています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 参考文献、引用文献の記述あり |
「動詞+副詞」や「動詞+前置詞」の形の句動詞(phrasal verb)を中心に熟語、慣用句、連語などを幅広くを集めた辞典です。事実上、"NTC's Americam Idioms Dictionary" [1987]とペアになる辞書。
ペーパーバック版ですがこのタイプの辞書としてはかなりぶ厚く、およそ1万2,000語を収録。ごく基本的な表現のためか類書では載せていない句動詞(phrasal verb)や熟語(idiom)も、この辞書では積極的に収録しています。
ほとんどの見出しには、短くわかりやすい例文を二つ以上掲載。また熟語(idiom)として、"go around the bend"(発狂する)や"fall on deaf ears"(無視される)などの表現を多数集めています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
熟語(idiom)を集めた辞典です。事実上、上記の"NTC's Dictionary of Phrasal Verbs And Other Idiomatic Verbal Phrases" [1993]とペアになる辞書。
タイトルにあるように、アメリカで使う熟語(idiom)を8,000語以上集めています。特定の地方のみで使う方言も多数収録。ほとんどの見出し語には、二つ以上の例文を掲載。
「動詞+副詞」や「動詞+前置詞」などの句動詞(phrasal verb)も拾っていますが、数は少なめ。ただし、その他の熟語や慣用句は"NTC's Dictionary of Phrasal Verbs And Other Idiomatic Verbal Phrases" [1993]にはないものを数多く集めています。
【引用:"NTC's Americam Idioms Dictionary" Richard A. Spears [NTC 1987]、22頁から、和訳は筆者】baby-in-the-woods:世間知らず、新米、青二才
【引用:"NTC's Americam Idioms Dictionary" Richard A. Spears [NTC 1987]、137頁から、和訳は筆者】go for it:やってみる、挑戦する
【引用:"NTC's Americam Idioms Dictionary" Richard A. Spears [NTC 1987]、145頁から、和訳は筆者】hair of the dog that bit one:迎え酒
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順(ページ数は示さず、語句の表記のみ) |
その他 | 特になし |
熟語、慣用句の中で、特にアメリカの日常生活でよく使うものを約1,700収録。具体的には、知人や友人とのあいさつや別れの言葉、初対面の人とのあいさつ、ケンカのときの罵声語、相槌の表現など。通常の英英辞典や熟語・慣用句辞典、句動詞辞典ではあまり見かけない言い回しを多数収録しています。
すべての見出しにはセリフ形式の例文が付けられており、実際の会話文の中で見出し語の熟語や慣用句がどのように使われるか、ひと目で確認できます。
副題にある"Small Talk"とは「肩の凝らない会話、雑談、世間話」の意味。お天気の話や野球はどこの球団が好きだとか、という類の会話のことです。この場合、"small"は"unimportant, trivial"の意味。
→元は映画のセリフ、「ちょっとでも反抗したら発砲するぞ」の意味、やや時代遅れの表現Make my day.(やれるもんならやってみろ)
→現状にもう耐えられないことを表わすI'vd had enough of this!(もうたくさんだ、ウンザリだ、いい加減にしてくれ)
→自分の発言の真実味を強調するTrust me.(うそじゃないよ、本当だよ)
→強い同意を表わすYou('d) better believe it.(間違いない、そうに違いない)
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順(ページ数は示さず、語句の表記のみ |
その他 | 特になし |
熟語(idiom)を集めた辞典ですが、「動詞+副詞」や「動詞+前置詞」の句動詞(phrasal verb)も掲載しています。タイトルにあるようにアメリカで使う熟語、慣用句、句動詞などを5,000以上を収録。
見出し語はアルファベット順に並び、次に意味の解説を短くまとめて、例文が続きます。この辞書ではさらに続けて、その例文を別の言い回しで表現する(パラフレーズする)という説明方法を採用。見出し語を含む例文を、さらに別のセンテンスに「パラフレーズする」というやり方は類書にはない、この辞書独特の解説方法です。
【引用:"A Dictionary of American Idioms" Adam Makkai [Barron's Educational Series, Inc. 1987]、219頁から 和訳は筆者】look forward to: To expect with hope or pleasure. Frank was looking forward to that evening's date. (He expected to enjoy the date.)「フランクはあの夕方のデートを楽しみにしていた」
定義文の英文は平易でわかりやすく、パラフレーズされた例文もよく見かける単語のみで作られているので、高校生にも強くお薦めの一冊です。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
句動詞(phrasal verb)を集めた辞典です。「動詞+副詞」の形のものを中心に拾ってあります。収録語彙数は約3,000。例文は1万2,000以上、類義語と反意語も2,000以上を収録。
意味の解説方法は、コリンズ社の学習辞典独自のタイプ。まず、見出し語の次に平易な単語を使った短い文章を提示します。つまり、語句の意味の解説は提示せず、いきなり例文が提示される形となります。その例文の中で見出し語を使用して、どういうシチュエーションでその語句を使うのかを明らかにします。
日本語で例を挙げると――
「びっくりする」:あなたが「びっくりする」ときは、たとえば不意に後ろから叩かれたときや、突然大きな音がしたとき、などです。
――のような説明となります。
このように、語句の意味を「説明文」で明らかにするのではなく、具体的な例文を見せて、「どういう場面で使うのか」を明らかにします。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 巻末に"particle"(不変化詞back, upなど)の解説あり |
熟語(idiom)を集めた辞典です。英語を母国語としない英語学習者向けの辞書です。「動詞」+「副詞」や「動詞」+前置詞」などの句動詞(phrasal verb)はあまり拾っていません。このタイプの辞書にしては小型で、薄手のシステム手帳ぐらいのサイズです。
見出し語は熟語(idiom)の中の主要語をアルファベット順に掲載。たとえば、"take advantage of"(〜を利用する)は"advantage"のところに、"look forward to"(〜を楽しみに待つ)は"forward"のところに載っています。
定義文は平易な単語のみを使い、長めの文章でくわしく解説。ほとんどの見出し語にはフルセンテンスの例文を併記。例文の中でわかりにくい単語については注記を追加しています。
Usage Levelは「堅苦しい」(formal)、「くだけた」(informal)、「俗語」(slang)、「軽蔑語」(derogatory)、「おどけた」(facetious)、などを区分。また、いくつかの見出し語には語源も掲載。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
二冊一組の辞書。"Volume 1"では、句動詞(phrasal verb)を中心に約8,000、"Volume 2"では、名詞+名詞やさらに長い句、文、文章などの慣用句("Idiomatic Phrase")や諺、格言に類するものを約7,000集めてあります。
"Volume 1"は句動詞(phrasal verb)のほか、動詞+前置詞+名詞や動詞+名詞+前置詞のような熟語(idiom)的表現まで多数収録。定義文は平易な単語のみを使用。例文はきわめて豊富。しばしば、一つの見出し語に対して二つ以上の例文を掲載。また、よく主語に来る名詞やよく同時に使う副詞、よく目的語に来る名詞なども、コロケーション情報として追記しています。
"Volume 2"は動詞+名詞や名詞+前置詞句のような短い熟語(idiom)から諺のような長い文章まで、句動詞(phrasal verb)以外のあらゆる熟語、慣用表現を合計約8,000を収録。"as a rule"や"run short (of)"のようなよく見かける熟語(idiom)も積極的に拾っています。
"Volume 2"も定義文は平易な単語のみを使用。例文もきわめて豊富。しばしば、一つの見出し語に対して二つ以上の例文を掲載。コロケーション情報も多数あり。見出し語が名詞句の場合ならよく一緒に使う動詞、見出し語が副詞句ならよく一緒に使う動詞を追記しています。
どちらの辞書にも巻頭に、この辞書についての説明を五十ページ以上に渡り延々と記してあり、辞書の編纂意義や用例、この辞書独特の文法略語の解説、文型の説明、例文の出所などを解説します。例文の多くは文学作品からの引用。辞書用に作られた例文ではなく、実際に使われた文章で見出し語の意味やニュアンスを確認することができます。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順(ページ数は示さず、語句の表記のみ) |
その他 | 巻頭に参考文献のほか、"Idioms"の解説などあり |
熟語(idiom)を集めた辞典です。事実上、"Oxford Idioms dictionary for learners of English" [1975]とペアの辞書。英語、米語の熟語(idiom)を合計1万以上収録。定義文は平易な単語のみを使い、長いセンテンスで丁寧に解説。例文の総数はそれほど多くはありません。見出し語によっては例文を二つ以上載せていることもありますが、定義文のみで例文を省略した見出し語も多数あります。少数ですが、マンガ風のコミカルなイラストも掲載。
多くの見出し語には"(NOTE)"として、その熟語(idiom)を使う時の注意事項や、熟語(idiom)を構成する各単語のくわしい意味などを解説。また、ときおり"(ORIGIN)"として、熟語(idiom)の語源や由来も併記。"(NOTE)"や"(ORIGIN)"の説明で使われている語句も平易なものです。
249ページから20ページほどは"Study Pages"という独立したコーナーあり。空所補充や正解選択形式の問題集となっており、イラストを見てここで使う熟語(idiom)は何か、といった問いを多数載せています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | "Study Pages"(問題集、巻末に正解あり) |
句動詞(phrasal verb)を集めた辞典です。事実上、"Oxford Phrasal Verbs dictionary for learners of English" [2001]とペアの辞書。英語、米語の句動詞(phrasal verb)を合計6,000以上収録。定義文は平易な単語のみを使い、長いセンテンスで丁寧に解説。例文の数は豊富。しばしば、一つの見出し語に対して二つ以上の例文を提示します。多くの見出し語には、近い意味を持つ句動詞や関連する熟語(idiom)も掲載。
見出し語はすべて"close"や"fight"などの一語の動詞です。発音記号も併載。不規則変化動詞の場合は活用形も記されます。句動詞(phrasal verb)は見出し語の次にアルファベット順に列記。"have"や"take"、"put"や"knock"などのきわめてよく見かける単語には、見出し語の次に、結び付く前置詞や副詞の一覧とその意味の掲載ページを記しています。
多くの見出し語には"(NOTE)"として、文法や語法の注意事項を追記。たとえば、この句動詞は受動態でよく使う、似た意味を持つ別の表現にはこんなものがある、といった追加情報を載せています。また、"(G)"として句動詞の文型を表記。動詞+副詞、動詞+名詞(代名詞)+副詞、動詞+前置詞などを明記し、句動詞がどういった品詞から構成されるのか、明らかにします。
見出し語によっては、"(OBJ)"として、目的語としてよく使う名詞をリストアップ。さらに、"(IDM)"として関係する熟語(idiom)、"(SYN)"や"(OPP)"として類義語や反意語を追記しています。
182ページから20ページほどは"Study Pages"という独立したコーナーあり。空所補充や正解選択形式の問題集となっており、イラストを見てここで使う句動詞(phrasal verb)は何か、といった問いを多数載せています
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | "Study Pages"(問題集、巻末に正解あり) |
初版は1965年(昭和40年)。句動詞(phrasal verb)や熟語(idiom)はもとより、"Ladies and gentleman!"のような定型句や諺、戯訓、格言まで幅広く収録した英和辞典。"sombody else"(誰か他の)や"or what"(〜か何か)など、あまりに基本的過ぎて英英のイディオム辞典には載っていないような言い回しも、多数収録しています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
句動詞(phrasal verb)を集めた英和辞典。この辞書では"phrasl verb"を「熟語動詞」と和訳しています。「動詞+前置詞」「動詞+副詞」の表現を収録。
この辞書独特の表記として、見出し語の中に"動詞 + particle"と書いてあるものがあります。"particle"にはいろいろな前置詞や副詞が来ることを意味します。
たとえば、"go + parcicle"とは――
go away:立ち去るgo back:戻るgo in:中に入るgo out:出て行く【引用:「コリンズ英語熟語動詞辞典」宮内秀雄 R・C・ゴリス共著[秀文インターナショナル 1976]、219-220頁から、一部内容省略】
――の四つの表現が可能なことを表わし、その意味と例文を記します。
"particle"は文法用語で「不変化詞」の意味。「前置詞」や「接続詞」のように、文全体の人称や時制が変化しても、自分自身は変化しない語句を指します。
原著は1974年に Tom McArthur が編纂した著作。この「コリンズ英語熟語動詞辞典」は日本人向けに改訂されており、見出し語や意味、用例を追加して、原著よりも三割ほどヴォリュームアップしたそうです。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |