「語法辞典」とは、単語ひとつ、句ひとつを逐一調べていき、こういう言い方はできる、こういう言い方はしない、というような調査や分析の結果を一冊にまとめた辞書です。
よって、このタイプの辞典では句や単語がアルファベット順に並び、一つ一つの句や単語について「こういう使い方は好ましい」「これはあまり一般的ではない」「文法的に見て不自然」というような説明がなされます。
たとえば、動詞の"give"を引いてみると、こんな例文が見つかります。
どちらの文も和訳すると「その男の子におもちゃを一つ上げた」ですね。まったく同じ意味を表わしているように思えます。語法辞典では、この二つの文で、実は細かいニュアンスにおいてここが違う、をくわしく説明します。
通常、「その男の子におもちゃを一つ上げた」を英訳すると、上記の例文の a.のようになります。ただし、「他の子供ではなくその男の子に」というニュアンスを込めて言う場合、b.のように"to the boy"を使います。このニュアンスの違いを和訳文に出してみると…
……日本語訳にあまりニュアンスが出ていないような気もしますが(汗)、話の中心が「おもちゃ」なのか「その少年」なのかの違いは表われたと思います。
「語法辞典」ではこういった文章表現の違いによる意味やニュアンスの差を細かく説明します。
和書では代表的な語法辞典。同じ出版社から出ている「詳解英文法辞典」と事実上ペアになる辞書。見出し語は単語レベルに留まらず、句動詞(phrasal verb)やイディオム(idiom)から"In the north","go to bed"などのよく見かける言い回しまで、きわめて幅広く拾い集めてあります。
巻末に詳細な英語の索引が付いているので、句動詞(phrasal verb)やイディオム(idiom)ではないがよく見かける表現でも捜し当てることができます。多くの見出しでは類似表現の解説も載せているので、類語辞典としても重宝します。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 参考文献、引用文献の記述あり |
英語タイトルに"Writer's Guide"とありますが、英文解釈にも使える便利辞書です。見出しはほとんどが単語でアルファベット順に並び、多数の例文を交えて、見出し語の使い方を細かく解説してあります。
多くの見出し語ではいくつかの類義語を併記し、それぞれの厳密な意味や使い方の違いを説明。巻末の索引は英語、日本語の両方があり、どちらからでも目的の語句を見つけることができます。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 日本語:五十音順 |
その他 | 参考文献の記述あり |
初版は1961年(昭和36年)。この辞典も見出しはほとんどが単語でアルファベット順に並び、多数の例文を交えて、見出し語の使い方を細かく解説してあります。ただし、類義語がかなりの数拾ってあるので、類義語辞典としても使えます。巻末にくわしい英語の索引付き。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 参考文献、引用文献の記述あり |
英語のごく基本的な動詞388語をリストアップして、各動詞についてきわめてくわしい解説を施した辞典。挙げられた動詞はbe動詞の他、"come, go, catch, do"など誰でも知っているような単語ばかりです。また、"can, may, shall, will"などの助動詞も含みます。
見出し語の各動詞は、どういう構文を取るかによって分類し、
などの文法的解説が、文学作品の一節などの実例を交えて、きわめてくわしく記されます。
レファレンスとしてちょいと引くにはヴォリュームがあり過ぎる解説かもしれません。しかし、基本的な動詞に関しては、他の文法書や語法書で物足りなく感じる場合、この辞書を当たると、満足いく説明が見つかる可能性大です。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:語句のアルファベット順 英語:項目別("話法"や"二重否定"などの文法用語をアルファベット順) |
その他 | 参考文献、引用文献の記述あり |
中学や高校の英語の授業で、「この二つの構文は同じ意味である」と習った構文について、「実は微妙なニュアンスの違いがある」ことを解き明かした事典。
【引用:「英語構文ニュアンス事典」田中 実 編著(北星堂書店 1988)、80頁から 下線は筆者】I am seeing her tonight.→彼女と会う約束をしている
I am going to see her tonight.→今夜会おうと一人で思っているだけ
【引用:「英語構文ニュアンス事典」田中 実 編著(北星堂書店 1988)、127頁から 下線と和訳は筆者】You must be back by 10 p.m.→10時までにもどれ、と話し手が言っている
You have to be back by 10 p.m.→誰か第三者が言ったことを単に「10時までにもどれよ」と聞き手に伝えているだけ
一見同じ意味のような思える二つの文が、使用する単語が少し違うだけで「実は、微妙にニュアンスが違うのだ」と納得できる実例と解説がたくさん挙げてあります。
見出し | 項目別:動詞構文・助動詞構文・名詞構文、など |
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索 引 | なし |
その他 | 巻末に参考文献の記述あり |
語、句、文をつなげる言葉を広く集めて、その実際の使用例と解説をまとめた辞書。書名にある「リンクワード」とは、広い意味での「接続詞」を指しているようです。"and"やhowever"はもちろん、コロンやセミコロン、"at least"や"in this way"のようなイディオム(idiom)、"equally"のような文修飾の副詞なども含みます。
前半のパートIでは、「リンクワード」を意味と機能別で分類し、豊富な例文を提示しながら、それぞれ細かいニュアンスはどこが違うのか、実際の英文では文のどの位置に置くのかなど、きわめてくわしい解説が施されます。
後半のパートIIでは、数字を使った表現に焦点を当て、「一メートル二十センチ」「一マイルとちょっと」「〜の三倍である」「六年間」「八月から九月まで」といった様々な日本語表現を英訳しています。
見出し | 英語:項目別 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
書名からすると、辞書ではなく純粋な研究書ですが、ページの大半は前置詞を見出しとした語法辞典として使うこともできます。「英語前置詞活用辞典」の姉妹編。前半のおよそ70ページが前置詞についての総論。前置詞の「定義、性格・起源、発達・種類、目的語の種類」などについて、語学の観点から学術的な解説です。
後半のおよそ330ページが、リストアップされた各前置詞についての解説。前置詞のリストアップの方法は二種類。綴りが似た前置詞は「形式による比較」として、"aroundと"round"、"till"と"until"、"out"と"out of"、"despite"と"in spite of"などを挙げています。意味が似ている前置詞は「意味による比較」として、"above"と"over"、"from"と"off"と"out of"など。
「意味による比較」の項目では、前置詞をアルファベット順に並べるのではなく、日本語訳ごとに分類。たとえば、「(ドア・場所など)を通って」には"at, by, through, via, by way of"の五つの前置詞をリストアップして、意味、用法・細かいニュアンスの違い、特定の前置詞が使える場合と使えない場合の説明、などを豊富な例文を交えてきわめてくわしく解説します。
見出し | 英語:項目別(綴りと意味、それぞれグループ別) |
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索 引 | 英語:アルファベット順 日本語:術語・事項 |
その他 | 巻末に参考文献、引用作品の記述あり |
「英語の前置詞」の姉妹編。見出し語は前置詞ではなく、名詞、動詞、形容詞、副詞など。それぞれの見出し語に対してどのような前置詞がくっつき、どのような意味になるかを解説。すべての見出し語に対して例文、例句あり。必要に応じて、前置詞を使った語句の細かいニュアンス、前置詞以外の語句と結び付く用法などの解説が続きます。
見出し語は、動詞+名詞+前置詞や動詞+前置詞、名詞+前置詞、形容詞+前置詞など。見出し語そのものについての定義や解説はなく、例文の中で見出し語とともに前置詞がどのように使われ、どんな意味を持つのか、説明を施します。主眼は、さまざまな文章の中で前置詞がどんな語句と結び付き、どんな意味を持つか、にあります。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 巻末に参考文献、引用作品の記述あり |
「正しい英語」を書く、話すための語法辞典。英語学習者を対象にわかりやすく書かれているわけではありません。見出し語はアルファベット順。編纂の第一目的は、規範となるべき「英語」を示すためであり、解説文もやや長く、しばしば語句の歴史的由来や成り立ちの過程、正確な発音なども細かく説明します。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
上記の"Fowler's Modern English Usage" [1965 second editon]の全面改訂版。見出し語を大量に追加し、解説文も新規の分は概ね短くまとめています。アメリカ英語やカナダ英語、オセアニアの英語なども扱い、"split infinitive"(分離不定詞)や"as if...was"など比較的新しい表現も拾っています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
上記の"Fowler's Modern English Usage" [1996 third editon]を基にして、約四十パーセントの記述を削り、内容をコンパクトにまとめたもの。第二版になってすたれてしまった語句や意味、用法を削除して、インターネットやコンピューター関連などを中心に、新しい語句や意味、用法を追加。
見出し語として"google", "blog", "virtual"なども掲載。"virtual"は新語ではありませんが、特にコンピューターゲームの分野では「仮想の、バーチャル空間の」という新しい意味を獲得した。
"google"はすでに固有名詞のニュアンスは消え失せ、普通名詞と認知されているそうです。また、"google"は動詞としても使い、意味は「サーチエンジンを使ってネットで検索する」です。"Yahoo!"や"AlltheWeb"を使って調べるのも"google 〜"と言う。【参考: Pocket Fowler's Modern English Usage [2008 second edition] 308頁】。日本語でも「ぐぐる」や「ググる」という表現が、ネット用語として定着しつつあります。
もちろん、新語ではない、基本的な英単語の解説も充実。多義語の"as"や"like"などは語義を細かく区分して、それぞれにくわしい意味の解説と例文を付けて、助動詞や時制などの解説も比較的わかりやすい文章に書き改められています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
上記の"Fowler's Modern English Usage" [1965 second editon]と同じタイプの辞書。初版は1947年。書名の通り、語句や構文の「よくある間違い」を集めています。また一方では、類義語を並べてその意味、用法違いを説明し、"Standard English"や"Standard American"については、その歴史や変遷について六ページに渡り詳細な解説を施しています。
見出し語はアルファベット順。解説文はかなり長め。リファレンス本としては小型でかなり薄い外見ですが、内容が非常に豊富で、かなりくわしい情報を得ることができます。
書名の副題"Abusus Non Tollit Usum"はラテン語の格言だそうです。英語に直すと"abuse does not take away use"。意味は「誤用法は正用法を駆逐しない」となります。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
上記の"Usage And Abusage" [1957 second editon]の改訂第三版。改訂者の Janet Whitcut は Longman Dictionary and Reference Book の元"Senior Research Editor"。"Longman Dictionary of the English Language" [1984]や"Longman Guide to English Usage"[1988], "Little Oxford Guide to English Usage" [1994]などの編纂に携った人物。
序文によれば、原著者の Eric Partridge の記述をなるべく残し、改訂を行った。古めかしいと思われる例文も、場合によってはそのまま使っているそうです。全面的に書き換えられたのは"disc"と"disk"の違いや"however"、など。 新たに加わった項目は"hopefully"の新語義や"sexism"、など。また、"vogue words"のリスト改訂が行われています。
"vogue words"とは通例、「流行語」と和訳します。本来そんな意味はなかったのに、メディアや文学作品などの影響で新しい意味を持つようになった言葉のこと。この辞書では特に、もともとなかった意味が新しい意味として定着してしまった「流行語」を集めています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
初版は1962年と古めの辞書ですが、解説文は平易な単語のみを使って短くまとめてあり、どちらかと言えば英語初学者向きの辞書です。
見出し語はアルファベット順。同意語との微妙なニュアンスの違い、似た綴りでまったく違う語句との使い分け方、イギリス英語とアメリカ英語の違い、間違えやすい発音、アクセント、などを解説しています。「仮定法」や「比較級」などの文法用語の解説は簡潔。全体に例文は短いものが多く、数も少なめです。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 特になし |
英語を母国語としない外国人英語学習者向けの語法辞典として、定番とも言える一冊。見出し語は「仮定法」や「話法」などの項目別ではなく語句がアルファベット順に並び、"go"と"come"の違い、"can"と"could"のくわしい意味と使い方などについて、丁寧でわかりやすい説明が続きます。
文法用語の「比較級」や「関係代名詞」などもそれぞれ"comparative"と"relative pronoun"の見出しで登場。文法辞典と同等以上のくわしく、わかりやすい解説を例文付きで示します。例文はしばしば英語として正しい文に対して、非文法的な文、不自然な文などを提示して、なぜ間違いなのか、どこが不自然なのか、その理由を明示します。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 特になし |
上記の"Practical English Usage" [1980 first edition]の全面改訂版。見出し語をかなり追加して、多くの例文は新しいものに差し替え。解説もよりくわしくなりました。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 特になし |
上記の"Practical English Usage" [1995 second edition]の改訂版。見出し語を追加して、多くの例文が新しいものに差し替え。また、既存の項目も関連する項目を一つにまとめ、あるいは、さらに細分化して詳細な説明を付け足すなどしています。特に、時制、接続詞と接続詞的な副詞の違い、関係詞などの項目は、大幅に書き換えられている。図表も大量に追加。
巻頭に"Don't say it!"という新コーナーを追加。よくある間違い(common mistakes)130個を、「ミスの例」と「正解」を二列のリスト形式で紹介。なぜ間違いなのかを記してある本文のページを示します。
新項目として"e-mail"の書き方を紹介。メールソフトの画面をページに載せ、フォーマルとインフォーマルな書式の違いなどを短く解説しています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 巻頭に"Don't say it!"(誤りやすいミスの紹介) |
上記の"Practical English Usage" [1980 first edition]の英語初学者向け版。解説文が短くなり、言語学的な説明は大幅に削っています。代わりに、二色刷りとなり、イラストや図表をたくさん取り入れて、厚さも上記の最新版の"Practical English Usage" [1995 second edition]の半分以下に収まり、高校生には強くお薦めの一冊です。機会があればぜひ、手に取ってパラパラと眺めてみて下さい。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 特になし |
上記の"Practical English Usage" [1980 first edition]と同じタイプの辞書。英語を母国語としない外国人英語学習者向けの語法辞典。見出し語は、文法用語などの項目別ではなく、アルファベット順に掲載。マンガ風のイラストや図表もたくさん取り入れています。
解説文は平易な単語を使って短くまとめています。例文も短いセンテンスがほとんど。"Practical English Usage" [1980 first edition]と比べて、「時制」や「助動詞」など文法用語の説明をよりくわしく解説しています。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | なし |
その他 | 巻末に不規則動詞の変化表と発音あり |
上記の"An A to Z of English Grammar And Usage" [1984 first edition]の全面改訂版。見出し語を大幅に追加。解説文は相変らず、短く簡潔でわかりやすい。マンガ風のイラストもたくさん追加。また、旧版にはなかった索引が巻末に付きました。
見出し | 英語:アルファベット順 |
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索 引 | 英語:アルファベット順 |
その他 | 特になし |