英作文の問題で意外に、問題文の「日本語」を解釈ミスしてその結果、英訳した文章も不正解ってことがよくあります。一つ試しに英訳してみましょう。
【問】:昨日、家族でもみじ狩りへ出掛けた
よくある誤答はこんな感じ。
【誤】:Yesterday my family went and hunt Momiji.
正解は、
【正】:Yesterday my family went and enjoyed autumn leaves.
です。
肝心な点は「もみじ狩り」をどう英訳するか。「もみじ」を"Momiji"、「狩り」を"hunt"にしてしまうとペケを食らいます。
なぜか。
「もみじ」は"Momiji"ではなく、「狩り」は"hunt"ではないからです。意味を深く考えずに、日本語の一語を英語の一語に置き換えると、「もみじ」は"Momiji"、「狩り」は"hunt"でよさそうな気がします。
ところが、よくよく考えてみると「もみじ狩り」とは、なにも家族全員が鉄砲を持って!!野山へ繰り出し、もみじを狙って発砲する!!わけではありません。
そもそも、この場合の「もみじ」とは一本の木の「もみじ」ではなく、「秋の紅葉で緑一色から様々な色に変化した木々」のことです。ましてや、「狩り」は「キツネ狩り」や「イノシシ狩り」の「狩り」とはまったく別物です。
「赤や黄の秋色に変化した野山の木々を観賞し、美景を楽しむこと」が「もみじ狩り」の本来の意味です。
よって、本来の意味の「もみじ狩り」を英語で表現すると、
【正】:"go and enjoy autumn leaves"
となります。
直訳すれば、「出掛けて秋色の葉っぱたちを楽しむ」です。くわしく言うと、「赤や黄の秋色に変化した野山の木々を観賞し、美景を楽しむこと」です。
まとめ。
「もみじ」="Momiji"、「狩り」="hunt"のように、日本語一語を英語一語に置き換えただけでは、意味が通じないことはしばしばあります。「もみじ狩り」="Momiji hunt"と直訳したあとに「もみじ狩り」とは具体的に何をするのかもう一度想像してみます。
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こうして問題文の日本語をもう一度見直し、別の日本語に置き換えることが和文英訳のスタートとなります。
今度は会話です。どういうシチュエーションなのか想像してみましょう。
【問】:「あの店で何食べた?」
【問】:「オレはハンバーガーだ」
【問】:「あたしはサンドイッチ」
ありがちな解答。
【正】:"What did you eat at that shop?"
【誤】:"I am a hamburger."
【誤】:"I am sandwiches."
機械的な直訳によるミスです。
何はさて置き、会話が行われたシチュエーションを想像して日本語のほうの意味をもう一度考えてみると、
です。
店で「何を食べたか」を質問しているわけですね。
よって、正解は…
【正】:"I ate a hamburger."
【正】:"I ate sandwiches."
実際の英会話ではもっと省略して、
【正】:"A hamburger."
【正】:"Sandwiches."
だけになるかもしれません。
誤答の英文二つをそのまま逆に和訳すると不気味なニュアンスになります。
【問】:"I am a hamburger."
【訳】:「オレはハンバーガーだ」
(= オレの身体は全体が巨大なハンバーガーだ)
【問】:"I am sandwiches."
【訳】:「あたしはサンドイッチ」
(= あたしの身体はサンドイッチで出来てるのよ)
人間サイズにまで巨大化した「ハンバーガー男」と、全身にサンドイッチが隙間なく張り付いた「サンドイッチ女」を想像させます。コワッ。
似たようなミスをいくつか見てみましょう。
【問】:「オレの目の黒いうちはそんなことはさせん」
【誤】:While my eyes are black, I never allow you to do such a thing.
【正】:As long as I live, I never allow you to do such a thing.
「目の黒いうちは」という日本語は「生きているうちは」という意味です。一種の比喩表現ですね。モノの例えです。そのまんま「目が黒い」と解釈したら、まず日本語のほうがナンのことやらサッパリです。
「オレの目の黒いうちは」=「オレが生きているうちは」="as long as I live"と解釈します。
もう一つ。直訳では不可の英文。
【問】:オレはテレビが大好きだ。
【誤】:I like television very much.
【正】:I like watching television very much.
実は、「テレビを好き」は「テレビで放送される番組を見るのが好き」ということです。
"like television"だけだと、「画面に何も映っていないテレビや砂嵐のテレビをはたから見るのが好き」という意味や、「テレビの本体を収集するのが好き」になりかねません。
話の流れでそういう話題になることもあるでしょう。アンティークなテレビを集める方もいらっしゃいます。
ただし、
「テレビを好き」=「テレビ番組を見るのが好き」
も、もちろんありえます。
日頃の会話の中で自分が「テレビを好き」と言うときは、どういう意味なのか、ちょっと想像してみて下さい。「テレビ番組を見るのが好き」という意味で言っていることもあるはずです。
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意外に、私たちは普段の会話でも短い言葉にいろいろな意味を込めて話しているものです。話の流れ次第で「テレビを好き」という短いフレーズでさえ複数の解釈が可能です。
英語に直す場合、その時のシチュエーションを想像してみると話の流れがわかるので、「テレビを好き」=「テレビの番組を見るのが好き」のように言い換えができるようになり、英語に直してもナチュラルな文を作ることができます。