時制……動詞や助動詞の語形が変化すること
《時制》とは、文法上の「時」に合わせて動詞や助動詞が過去形や完了形に変化することを指します。
日本語ではすぐに思いつくところで「現在時制」「過去時制」「未来時制」の三つがあります。英語にはこのほかに、「進行時制」「完了時制」「完了進行時制」などがあります。
《時制》はあくまで動詞や助動詞の「語形の変化」を指します。なので、《時制》が文全体が意味する「時」とは一致しないこともけっこうあります。たとえば、英語でも日本語でも、未来のことを表わすときに、未来時制ではなく現在時制を使うことがあります。
【例文】:I leave tomorrow morning.
【和訳】:明日の朝、出発します。
【例文】の《時制》を見てみると、"leave"も「出発します」も「現在形」なので《時制》は現在です。ところが、文全体の内容は「明日」、つまり未来のことです。
動詞と助動詞で時制を表わす
英語の《時制》は現在時制、過去時制、未来時制の三つの基本時制を中心にそれぞれ、進行時制、完了時制、完了進行時制の三つがあります。《時制》はもっぱら動詞と助動詞の変化形で表わします。
動詞と助動詞をどう組み合わせてどの《時制》を表わすのか一覧でまとめます。
基本的な三つの時制
英語の基本的な三つの《時制》「現在時制、過去時制、未来時制」についてまとめます。
現在時制
基本時制(1)
↑
# 現在時制:「主語 + 動詞/助動詞の現在形」
現在時制は「主語 + 動詞/助動詞の現在形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「〜する」
基本時制:現在時制(1)
↑
動作動詞の場合、現在時制は現在の『動作』を表わします。ただし実際にはたいてい、時の概念を含まない一般論か、習慣的に繰り返す動作や行ないを表わします。
動作動詞の場合、現在進行中の『動作』は現在進行時制で表わします→【参照】:『「現在進行時制」』
【例文】:Cats chase rats.
【和訳】:猫がねずみを獲る。
→現在進行中の動作ではなく、「猫とは一般に〜である」という一般論
【例文】:You can run fast.
【和訳】:君は足が速い。
→今目の前で走っているわけではなく、「いつ走っても君の足は速い」という一般論
『状態』を表わす動詞……「〜である」
基本時制:現在時制(2)
↑
状態動詞の場合、現在時制は今現在継続中の『状態』を表わします。
【例文】:I love green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスが大好きだ。
→今は抹茶アイスが好き
【例文】:You look tired.
【和訳】:疲れているように見えるよ。
→今現在は疲れた様子
過去時制
基本時制(2)
↑
# 過去時制:「主語 + 動詞/助動詞の過去形」
過去時制は「主語 + 動詞/助動詞の過去形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「〜した」
基本時制:過去時制(1)
↑
動作動詞の過去時制は、すでに終った過去の『動作』を表わします。
【例文】:Smoke rose from the television.
【和訳】:テレビから煙が出たぞ。
→煙はもう出ていない
【例文】:I ate breakfast.
【和訳】:朝御飯を食べました。
→すでに朝食は食べ終えた
『状態』を表わす動詞……「〜だった」
基本時制:過去時制(2)
↑
状態動詞の過去時制は、今は違うが昔はそうだった『状態』を表わします。
【例文】:I loved green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスが大好きだった。
→今はそうでもない、あるいは、嫌い
【例文】:You looked tired.
【和訳】:疲れているように見えたよ。
→今は疲労した様子はない、あるいは、元気
未来時制
基本時制(3)
↑
# 未来時制:「主語 + will/shall + 動詞の原形」
未来時制は「主語 + will/shall + 動詞の原形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「(将来的に)〜するだろう」
基本時制:未来時制(1)
↑
動作動詞の未来時制は、これから行う『動作』を表わします。単純な未来を表わす場合はたいてい"will"を使います。"shall"はやや堅苦しい言い方。
【例文】:Smoke will rise from the television if you always keep it on.
【和訳】:たまにはスイッチを切らないと、テレビから煙が出るよ。
→点けっぱなしだと、内部が熱を持っていつかは煙を吹くよ
【例文】:I'll eat breakfast.
【和訳】:朝御飯を食べるだろう。
→これから朝食を摂る予定
『状態』を表わす動詞……「(将来的に)〜であるだろう」
基本時制:未来時制(2)
↑
状態動詞の未来時制は、これからなるであろう『状態』を表わします。やはり、単純な未来を表わす場合はたいてい"will"を使います。"shall"はやや堅苦しい言い方。
【例文】:You'll look tired.
【和訳】:疲れているように見えるだろう。
→この先疲労が現われてくるだろう
【例文】:I'll love green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスにハマるだろう。
→今後おそらく好きになるだろう
進行中の動作や継続中の状態を表わす時制
現在進行時制
進行時制(1)
↑
# 現在進行時制:「主語 + am/is/are + 動詞のing形」
動作動詞も状態動詞も長くは続かず一時的であることを表わします。
『動作』を表わす動詞……「(今ちょうど)〜している」
現在進行時制(1)
↑
動作動詞の場合、現在進行時制は『動作』がちょうど今現在継続中であるニュアンスを強調します。
【例文】:Smoke is rising from the television.
【和訳】:テレビから煙が出ているぞ。
→今まさに煙がもくもく出ている
【例文】:I'm eating breakfast.
【和訳】:朝御飯を食べています。
→ただいま朝食中
『状態』を表わす動詞……「(現在一時的に)〜である」
現在進行時制(2)
↑
状態動詞の場合、現在進行時制は現在継続中の『状態』が長くは続かず一時的であることを強調します。
【例文】:You're looking tired.
【和訳】:今、疲れているように見えるよ。
→今見た感じでは疲労した様子
【例文】:I'm loving green tea ice cream.
【和訳】:今、抹茶アイスにハマっている。
→今は一時的に大好き
状態動詞のほとんどにはもともと「継続」のニュアンスがあります。なので、状態動詞を進行時制で使うことは比較的まれです。例外的に、『状態』が長くは続かず一時的であることを強調するときに、状態動詞を進行時制の形で使います。
過去進行時制
進行時制(2)
↑
# 過去進行時制:「主語 + was/were + 動詞のing形」
動作動詞も状態動詞も物事が現在までは続かず一時的ですでに終了したことを表わします。
『動作』を表わす動詞……「(昔一時的に)〜していた」
過去進行時制(1)
↑
動作動詞の場合、過去進行時制は昔一時期に継続した『動作』を表わします。
【例文】:A little while ago smoke was rising from the television.
【和訳】:さっき、テレビから煙が出ていたぞ。
→さっきは煙がもくもく出ていた、今は出ていない
【例文】:I was eating breakfast when you called me.
【和訳】:あなたが電話をかけてきたとき、朝御飯を食べていた。
→電話があったときはちょうど朝食中、今は食べ終えた
『状態』を表わす動詞……「(昔は一時的に)〜だった」
過去進行時制(2)
↑
状態動詞の場合、過去進行時制は継続した『状態』が長くは続かず一時的であったことを強調します。
【例文】:You were looking tired.
【和訳】:疲れているように見えていたよ。
→その時の様子は疲労していた、今は違う
【例文】:I was loving green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスにハマっていたことがあった。
→昔一時期、好きだった、今は違う
状態動詞のほとんどにはもともと「継続」のニュアンスがあります。なので、状態動詞を進行時制で使うことは比較的まれです。例外的に、『状態』が長くは続かず一時的だったことを強調するときに、状態動詞を進行時制の形で使います。
未来進行時制
進行時制(3)
↑
# 未来進行時制:「主語 + will/shall + be + 動詞のing形」
動作動詞も状態動詞も、将来的には起こるけれど長くは続かないと思われる物事を表わします。
『動作』を表わす動詞……「(将来一時的に)〜しているだろう」
未来進行時制(1)
↑
動作動詞の場合、未来進行時制は将来のある一時期に継続する『動作』を表わします。
【例文】:This time tomorrow smoke will be rising from the television.
【和訳】:明日の今ごろには、テレビから煙が出ているよ。
→煙は出るがそんなに長くは続かないだろう
【例文】:This time tomorrow I'll be eating breakfast.
【和訳】:明日の今ごろは、朝御飯を食べているだろう。
→ちょうど朝御飯の最中だろう
『状態』を表わす動詞……「(将来一時的に)〜だろう」
未来進行時制(2)
↑
状態動詞の場合、未来進行時制は将来の『状態』が長くは続かず一時的であることを強調します。
【例文】:You'll be looking tired if you don't have enough sleep.
【和訳】:睡眠不足が続くと、疲れているように見えるだろう。
→今後おそらく疲労が現われるが、眠れば回復するだろう
【例文】:I'll loving green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスにハマるだろう。
→今後好きになるが、もっとおいしいアイスが見つかるまでだろう
状態動詞のほとんどにはもともと「継続」のニュアンスがあります。なので、状態動詞を進行時制で使うことは比較的まれです。例外的に、『状態』が長くは続かず一時的であることを強調するときに、状態動詞を進行時制の形で使います。
物事が完了してどうなるかを表わす時制
現在完了時制
完了時制(1)
↑
# 現在完了時制:「主語 + have/has + 動詞の過去分詞形」
現在完了時制は「主語 + have/has + 動詞の過去分詞形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「昔〜した(その結果今は〜である)」
完了時制:現在完了時制(1)
↑
動作動詞の場合、現在完了時制は過去の『動作』が原因で「今はどうなったか」を表わします。
過去時制は「昔〜をした」と述べるにとどまります。過去の『動作』が原因で「その結果どうなったか」のニュアンスを含めるときは現在完了時制を使います。
# 現在完了時制…… 過去の『動作』の結果「現在はどうなったのか」を常に意識する
# 過去時制……『動作』をすでに終った出来事として扱う
【例文】:Smoke has risen from the TV.
【和訳】:テレビから煙が出ていたぞ。
→時制は現在完了、煙は止まったが、まだそこいらに漂っている
【例文】:Smoke rose from the TV this morning.
【和訳】:今朝、テレビから煙が出たぞ。
→時制は過去、煙が出たという事実を述べるのみ、今現在の様子は不明
【例文】:I've eaten breakfast.
【和訳】:朝御飯は食べました。
→時制は現在完了、今は満腹
【例文】:I ate breakfast one hour ago.
【和訳】:一時間前に朝御飯は食べました。
→時制は過去、現在空腹かどうかは不明
『状態』を表わす動詞……「(今も昔も)〜である」
完了時制:現在完了時制(2)
↑
状態動詞の場合、今も昔も同じである『状態』を表わします。
過去時制は「昔は〜だった」と述べるにとどまります。ニュアンスはたいてい「昔はそうだったが今は違う」です。過去の『状態』が現在も続いているニュアンスを含めるときは現在完了時制を使います。
# 現在完了時制……『状態』が現在も続いていることを常に意識する
# 過去時制」……昔はそうだったが今は違う『状態』を表わす
【例文】:You've looked tired.
【和訳】:疲れているように見えます。
→時制は現在完了、けっこう前から疲労している、今もそう見える
【例文】:You looked tired.
【和訳】:疲れているように見えた。
→時制は過去、以前疲労していたように見えた、今はそうでもない、あるいは、元気
【例文】:I've loved green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスが大好きだ。
→時制は現在完了、けっこう前から抹茶アイスが好き、今も好き
【例文】:I loved green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスが大好きだ。
→時制は過去、昔は抹茶アイスが好きだった、今はそうでもない、あるいは、嫌い
過去完了時制
完了時制(2)
↑
# 過去完了時制:「主語 + had + 動詞の過去分詞形」
過去完了時制は「主語 + had + 動詞の過去分詞形」で表わします。過去完了時制は過去のさらに過去を表わすので「大過去」と呼ぶことがあります。
『動作』を表わす動詞……「(昔のそのまた昔は)〜した」
完了時制:過去完了時制(1)
↑
動作動詞の場合、過去完了時制は昔を振り返って、さらにそれ以前の『動作』を表わします。
【例文】:Smoke had risen from the television when I got home.
【和訳】:家に帰ったら、テレビから煙が出ていたぞ。
→帰宅時すでに煙が部屋に充満していた
【例文】:I had eaten breakfast when you called me.
【和訳】:あなたが電話をかけてきたときに、朝御飯はすませていました。
→電話が来る前に朝食はすませていた
『状態』を表わす動詞……「(昔のそのまた昔は)〜だった」
完了時制:過去完了時制(2)
↑
状態動詞の場合、過去完了時制は昔を振り返って、さらにそれ以前の『状態』を表わします。
【例文】:You had looked tired when we met yesterday.
【和訳】:昨日会ったときは、疲れているように見えたよ。
→会う前から疲労していた
【例文】:I had loved green tea ice cream before it became popular.
【和訳】:人気が出る以前に、抹茶アイスにハマっていた。
→抹茶アイスの人気が出る前から好きだった
未来完了時制
完了時制(3)
↑
# 未来完了時制:「主語 + will/shall + have + 動詞の過去分詞形」
未来完了時制は「主語 + will/shall + have + 動詞の過去分詞形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「(将来的には)〜してしまうだろう」
完了時制:未来完了時制(1)
↑
動作動詞の場合、未来完了時制は将来のある時点で終了する『動作』を表わします。
【例文】:Smoke will have risen from the television before we have it repaired.
【和訳】:修理を頼む前にテレビから煙が出ることになるぞ。
→修理前に煙を吹いて故障するだろう
【例文】:I'll have eaten breakfast when you pick me up.
【和訳】:あなたが迎えに来てくれるころには朝御飯を食べ終えているだろう。
→迎えが来る前には朝食はすんでいるだろう
『状態』を表わす動詞……「(未来のある時点まで)〜であるだろう」
完了時制:未来完了時制(2)
↑
状態動詞の場合、未来完了時制は将来のある時点まで継続する『状態』を表わします。
【例文】:You'll have looked tired until you have a rest.
【和訳】:休憩するまでは、疲れているように見えるだろう。
→休まないと疲労は取れないだろう
【例文】:I'll have loved green tea ice cream until I find better ice cream.
【和訳】:もっとおいしいアイスを見つけるまで、抹茶アイスにハマっているだろう。
→おいしいのが見つかったらたぶん乗り換えるだろう
動作や状態が一時的であることを表わす時制
現在完了進行時制
完了進行時制(1)
↑
# 現在完了進行時制:「主語 + have/has + been+ 動詞のing形」
現在完了進行時制は「主語 + have/has + been+ 動詞のing形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「(昔〜したが今も)〜している」
完了進行時制:現在完了進行時制(1)
↑
動作動詞の場合、現在完了進行時制は過去に始まり現在も続く『動作』を表わします。
【例文】:Smoke has been rising from the television.
【和訳】:テレビから煙が出ているぞ。
→さっきから煙がもくもく出ている
【例文】:I've been eating breakfast.
【和訳】:朝食を食べているところです。
→少し前に食べ始めて、今も食事中
『状態』を表わす動詞……「(今も昔もずっと)〜である」
完了進行時制:現在完了進行時制(2)
↑
状態動詞の場合、現在完了進行時制は今でも影響が続く過去の『状態』を表わします。ただし、今でも影響が続く過去の『状態』は長くは続かず一時的であることを強調します。
【例文】:You've been looking tired.
【和訳】:疲れているように見えるよ。
→ちょっと前から疲労した様子、それ以前は違う
【例文】:I've been loving green tea ice cream.
【和訳】:抹茶アイスが大好きだ。
→ちょっと前から好き、それ以前は違う
状態動詞のほとんどにはもともと「継続」のニュアンスがあります。なので、状態動詞を完了進行時制で使うことは比較的まれです。
過去完了進行時制
完了進行時制(2)
↑
# 過去完了進行時制:「主語 + had + been + 動詞のing形」
過去完了進行時制は「主語 + had + been + 動詞のing形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「(昔のそのまた昔に)〜していた」
完了進行時制:過去完了進行時制(1)
↑
動作動詞の場合、過去完了進行時制は過去のある時点まで続いた『動作』を表わします。
【例文】:Smoke had been rising from the television when I got home.
【和訳】:家に帰ったら、テレビから煙が出ていたぞ。
→帰宅時すでに煙がもくもく出ていた、今はもう出ていない
【例文】:I had been eating breakfast when you called me.
【和訳】:あなたが電話をかけてきたとき、朝御飯を食べていました。
→電話がかかって来たときちょうど食事中だった、今はすでに食べ終えた
『状態』を表わす動詞……「(昔のそのまた昔まで)〜だった」
完了進行時制:過去完了進行時制(2)
↑
状態動詞の場合、過去完了進行時制は過去のある時点まで継続した『状態』を表わします。ただし、過去のある時点まで継続した『状態』が長くは続かず一時的であったことを強調します。
【例文】:You had been looking tired before we took lunch.
【和訳】:みんなで昼御飯を食べるまでは、あなたは疲れているように見えたよ。
→昼食後は元気になった
【例文】:I had been loving green tea ice cream before it became popular.
【和訳】:人気が出る以前に、抹茶アイスにハマっていた。
→人気が出る前に一時期好きだった、今は違う
状態動詞のほとんどにはもともと「継続」のニュアンスがあります。なので、状態動詞を完了進行時制で使うことは比較的まれです。
未来完了進行時制
完了進行時制(3)
↑
# 未来完了進行時制:「主語 + will/shall + have + been + 動詞のing形」
未来完了進行時制は「主語 + will/shall + have + been + 動詞のing形」で表わします。
『動作』を表わす動詞……「(その時まで)〜しているだろう」
完了進行時制:未来完了進行時制(1)
↑
動作動詞の場合、未来完了進行時制は将来のある時点まで続く『動作』を表わします。
【例文】:Smoke will have been rising from the television unless someone switchs it off.
【和訳】:テレビのスイッチを切らないと、煙が止まらないよ。
→電源がオンのままだと、故障したテレビから煙が出続けるだろう
【例文】:I'll have been eating breakfast when you pick me up.
【和訳】:あなたが迎えに来てくれるころはまだ、朝御飯を食べているだろう。
→迎えが来るころはまだ、朝食中だろう
『状態』を表わす動詞……「(未来のある時点まで)〜であるだろう」
完了進行時制:未来完了進行時制(2)
↑
状態動詞の場合、未来完了進行時制は将来のある時点まで続く『状態』を表わします。ただし、将来のある時点まで続く『状態』が長くは続かず一時的であることを強調します。
【例文】:You'll have been looking tired until you have a rest.
【和訳】:休憩するまでは、疲れているように見えるだろう。
→休みを取るまでしばらくは疲労した様子が続く
【例文】:I'll have been loving green tea ice cream until I find better one.
【和訳】:もっとおいしいアイスを見つけるまで、抹茶アイスにハマり続けるだろう。
→うまいアイスが見つかるまでしばらくは抹茶アイスが好きだろう
状態動詞のほとんどにはもともと「継続」のニュアンスがあります。なので、状態動詞を完了進行時制で使うことは比較的まれです。
"will"以外で表わす未来
未来時制について、わかりにくい点や間違えやすい点をまとめます。
一人称で使う"shall"はやや堅苦しい
未来のことを表現するとき、"will"の代わりに"shall"を使うことがあります。
"shall"は使う場面が限られます。たいてい、一人称の代名詞(I, we)を主語にして、"I shall 〜. we shall〜."の形で使います。
意味は、"will"と同じく、単純に「未来」を表わします。ただし、"shall"のほうがやや堅苦しい言い方です。
【例文】:I shall be back in just ten minutes.[※やや堅苦しい言い方]
【和訳】:十分でもどって参ります。
【例文】:I will be back in just ten minutes.
【和訳】:十分でもどって来ます。
→"shall"はやや堅苦しい表現
【例文】:We shall visit you at 1.00 p.m.[※やや堅苦しい言い方]
【和訳】:午後一時にお伺いいたします。
【例文】:We will visit you at 1.00 p.m.
【和訳】:午後一時にお伺いします。
→"shall"はやや堅苦しい表現
疑問文の"Shall I 〜? Shall we 〜?"は「お誘い、申し出、相談」のニュアンスを表わします→【参照】:『助動詞の意味:shall』
時や条件を表わす接続詞が作る節
文全体の内容は未来だけど"will, shall"が使えない場合があります。
「if/when + 主語 + will + 〜」が不可の場合
未来時制アレコレ(2)未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!(1)
↑
時や条件を表わす接続詞の"if, when"などを使った節の中では通例、"will, shall"で表わす未来時制を使いません。
# 時や条件を表わす接続詞(when, if, etc)が作る節の中で未来時制は使わない
日本語でも「もしあした晴れるだろうなら〜」や「あなたが迎えに来てくれるだろうとき〜」とはあまり言いません。「もし〜」の話や「〜のとき」の話で未来時制を使うと日本語としてやや不自然です。通常は現在時制を使って「もしあした晴れるなら〜」や「あなたが迎えに来てくれるとき」と表現します。
英語でも同じです。"if, when"の節の中で"will, shall"を使うと英語としてたいてい不自然です。"if, when"の節は文意が成立するための前提条件になので、「〜だろう」ではなく「〜である」の話が必ず必要です。
未来時制 → 現在時制
未来時制アレコレ(2)未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!(2)
↑
文全体が未来時制でも、時や条件を表わす接続詞(if, when, etc)が作る節は現在時制を使います。
【例文】:あなたが行かないんなら私も行かない。
【 × 】:I won't go if you won't go.
【 ○ 】:I won't go if you don't go.
→if節は現在時制を使う
【例文】:夜が明けたら行方不明の方の捜索を再開します。
【 × 】:We will resume searching for missing people when the day will break.
【 ○ 】:We will resume searching for missing people when the day breaks.
→when節は現在時制を使う
未来進行時制 → 現在進行時制
未来時制アレコレ(2)未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!(3)
↑
文全体が未来進行時制でも、時や条件を表わす接続詞(if, when, etc)が作る節は現在進行時制を使います。
【例文】:あなたが宿題をしているあいだ、私はテレビを見ているよ。
【 × 】:I'll be watching television while you'll be doing your homework.
【 ○ 】:I'll be watching television while you are doing your homework.
→while節は現在進行時制を使う
未来完了時制 → 現在完了時制
未来時制アレコレ(2)未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!(4)
↑
文全体が未来完了時制でも、時や条件を表わす接続詞(if, when, etc)が作る節は現在完了時制を使います。
【例文】:消防隊が到着するころには、その家は焼け落ちているだろう。
【 × 】:The house will burn down by the time the fire brigade will have arrived.
【 ○ 】:The house will burn down by the time the fire brigade has arrived.
→by the time節は現在完了時制を使う
【例文】:その巨大風船は、ちょっと触っただけで割れてしまうだろう。
【 × 】:The gigantic balloon will break the moment you will have touched it lightly.
【 ○ 】:The gigantic balloon will break the moment you have touched it lightly.
→the moment節は現在完了時制を使う
"will, shall"が使える場合
未来時制アレコレ(2)未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!(5)
↑
通例、時や条件を表わす接続詞の"if, when"などを使った節の中では通例、"will, shall"で表わす未来時制を使いません→【参照】:『未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!:「if/when + 主語 + will + 〜」が不可の場合』
ただし、willが表わす意味によっては「if + 主語 + will + 〜」や「when + 主語 + will + 〜」を使うことがあります。
"if 〜, when 〜"が動詞の目的語の場合
未来時制アレコレ:未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!:"will, shall"が使える場合(1)
↑
"if"や"when"が動詞の目的語の場合は未来を表わす"will"や"shall"が使えます。動詞の目的語の場合、"if"の意味はたいてい「もし〜」(条件)ではなく「〜かどうか」(択一)です。
# 「主語 + 動詞 + (目的語) + if/when + will 〜.」は可能[※if/when 〜は動詞の目的語]
【例文】:A clerk will ask you if you will be paying with cash or credit.
【和訳】:支払いを現金にするかカードにするかは店員があなたに尋ねるでしょう。
→"if"の意味は「〜かどうか」、"if 〜 credit"は動詞"ask"の目的語
【例文】:I really wonder if the pandemic will end?
【和訳】:このパンデミックは本当に終息するのだろうか。
→"if"の意味は「〜かどうか」、"if 〜 end"は動詞"wonder"の目的語
【例文】:The doctor will tell me when I will be discharged from the hospital.
【和訳】:私がいつ退院できるかは先生が教えてくれるでしょう。
→"when"の意味は「いつ〜なのか」、"when 〜 hopital"は動詞"tell"の目的語
"will"が「未来」以外の意味を持つとき
未来時制アレコレ:未来時制なのに"will, shall"が使用不可?!:"will, shall"が使える場合(2)
↑
"if"が作る節に限り、未来時制でも"will"を使うことがあります。この時の"will"は目的やお願い、こだわりなどの特別なニュアンスを追加で表わします→【参照】:『ゼロから始める仮定法:"if + 主語 + will 〜"や"if + 主語 + would 〜"は可能?』
# 「if + 主語 + will 〜」は可能[※"will"が結果やお願い、こだわりなどを表わす]
【例文】:If the amount of carbon dioxide will be reduced, we will permit to build wind turbines.
【和訳】:二酸化炭素の量が減らせるのなら、風力発電機の建設を許可しましょう。
→if節の"will"は結果を表わす
【例文】の場合、二酸化炭素の量が減少するのは風力発電機を設置して稼動させたあとの話です。ifがある節が時間的に未来になる場合、ifがある節にwillを使います。
【例文】:I would really appreciate it if you will contact me by email.
【和訳】:メールで連絡を頂ければ幸甚に存じます。
→if節の"will"は丁寧なお願いを表わす
【例文】の場合、文全体が丁寧な依頼を表わします。ifがある節にwillを置いて丁寧な依頼であることを強調します。
【例文】:If you will not obey the orders of the doctor, you won't get better.
【和訳】:医者の指示に従わないと言うのなら、回復は見込めないよ。
→if節の"will"はこだわり、強情を表わす
【例文】の場合、ifがある節は"you"の強情や頑固を表わします。ifがある節にwillを置いて主語の"you"強情さや頑固さを強調します。
"will, shall"以外で表わす未来
未来のことを表現するとき、英語では"will, shall"を使う未来時制以外の表現方法がけっこうあります。
be going to不定詞
未来を未来時制以外で表わす(1)
↑
"be going to 不定詞"を使うと"will, shall"を使った未来時制よりも「主語の意思や話し手の思惑」がいっそう強く表われます。もともと"be going to 不定詞"は進行時制なので、ニュアンス的には現状を踏まえた上でこれからどうなるのかを強調します。
【ある程度決まっている予定、計画】(〜するつもりだ、〜する予定だ)
未来を未来時制以外で表わす:be going to 不定詞(1)
↑
"be going to不定詞"は主語や話し手の意思や計画に基づいて、将来実現の可能性が高い物事を表わします。
【例文】:I'm going to study cooking in France to become a pastry cook.
【和訳】:パティシエになるためフランスで料理の勉強をするつもりです。
→フランスへ行く意志は固い
【例文】:They are going to knock down this ballpark and to build new one.
【和訳】:この野球場は取り壊されて、新しいのが作られる予定です。
→取り壊して新築は決定事項
【近い将来】(〜しそうだ、〜になりそうだ)
未来を未来時制以外で表わす:be going to 不定詞(2)
↑
"be going to不定詞"はごく近い未来に何かが起こりそうなことや、すでに始まりつつある出来事を表わします。
【例文】:The river is going to overflow.
【和訳】:川が氾濫しそうだ。
→川の水があふれかけている
【例文】:There's going to be a water shortage this summer.
【和訳】:この夏は水不足になりそうだ。
→現状ですでに降水量が少ない
【実現しなかった物事】(〜しそうだった、〜しかけたところだった)
未来を未来時制以外で表わす:be going to 不定詞(3)
↑
"be going to不定詞"を過去時制で使うとたいてい実現しなかった物事や、本格的に始める前に中止したことを表わします。
【例文】:I was going to burst out laughing.
【和訳】:爆笑するところでした。
→爆笑しかけたがギリギリで笑うのをこらえた【過去時制】
【例文】:It started to rain when the game was going to start.
【和訳】:試合が始まりかけたところで雨が降り始めた。
→おそらく試合開始は遅れたか試合そのものが中止【過去時制】
【他者への警告や自分の意思表示】(〜することになる、〜するつもりだ)
未来を未来時制以外で表わす:be going to 不定詞(4)
↑
"be going to不定詞"はifがある「もし〜ならば」の文で使うと、他人に対する警告や自分自身の強い意思表示を表わします。
【例文】:You are going to be infected by viruses if you use computers without antivirus software.
【和訳】:ウイルス対策ソフトなしでコンピュータを使うと、ウイルスに感染するよ。
→be going to不定詞は警告を表わす
【例文】:Your eyes are going to get weak if you play video games too often.
【和訳】:ゲームばっかりしてると、眼が悪くなるよ。
→be going to不定詞は警告を表わす
【例文】:I'm going to study abroad if I get a scholarship.
【和訳】:奨学金がもらえたら留学するつもりです。
→be going to不定詞は意思表示を表わす
現在時制(〜する予定だ、〜する)
未来を未来時制以外で表わす(2)
↑
予定としてきっちり決まっている未来を表わします。交通機関の運行や行事、会合などスケジュールに従って動く物事を表わすときによく使います。
【例文】:The fisrt train starts at 5.30 a.m.
【和訳】:始発列車は午前五時半に出ます。
→5:30始発ははスケジュール通りの運行
【例文】:What time does the next flight to Fukuoka depart?
【和訳】:次の福岡への便は何時に出発しますか。
→飛行機の運行スケジュールに関する質問
特に一連の行動予定を列記する場合は、"will, shall"の代わりに現在時制を使います。
【例文】:七時にホテルを出て、八時前には空港に着き、九時の飛行機に乗ります。
【英訳】:We leave the hotel at seven, arrive at the airport before eight and take the plane at nine.
→行動予定を並べるときは現在時制を使う
現在進行時制(〜するつもりだ、〜する予定にしている)
未来を未来時制以外で表わす(3)
↑
準備が着々と進行しつつある未来の予定を表わします。すでに決定している、個人的な予定や計画について話すときによく使います。
【例文】:I'm receiving a flu vaccination tomorrow afternoon.
【和訳】:明日の昼過ぎにインフルエンザの予防接種を受けるつもりです。
→午後に接種を受けに行く予定
【例文】:I'm having an interview next Sunday for an after school job.
【和訳】:来週の日曜日にバイトの面接がある。
→日曜日に面接を受ける予定
be + to不定詞(〜する予定だ、〜するつもりだ)
未来を未来時制以外で表わす(4)
↑
個人のスケジュールではなく、組織や団体が設けた公式の予定や逆らうことができない運命を表わします。やや堅苦しい表現です。
【例文】:We are to move to Nagasaki next year.
【和訳】:来年長崎へ引っ越す予定です。
→仕事などの都合で引っ越す、「be + to不定詞」は予定を表わす
【例文】:Anyone who pollutes this pond is to be cursed.
【和訳】:この池を荒らす者は誰であれ呪いが降りかかるであろう。
→池を荒らすと必ず呪われる、「be + to不定詞」は運命を表わす
be about to不定詞(〜する寸前だ、もうすぐ〜する)
未来を未来時制以外で表わす(5)
↑
ごく近い未来に意図的に何かを行なうニュアンスや物事が始まるニュアンスを強調します。
【例文】:I was about to go out when the earthquake happened.
【和訳】:地震発生時は出かける寸前でした。
→家を出かかっていた
【例文】:I was about to get on the bus when it began raining.
【和訳】:雨が降り出したとき、ちょうどバスに乗ろうとしていたところでした。
→乗り込む直前だった
【例文】:The final match is about to begin.
【和訳】:決勝戦が始まろうとしている。
【例文】:Right as the train doors were about to close, someone rushed in.
【和訳】:電車のドアが閉まる直前に誰かが駆け込んで乗って来た。
be on the verge of 〜ing(もうすぐ〜しそうだ、近いうちに〜になる)
未来を未来時制以外で表わす(6)
↑
ごく近い未来に物事が起こるニュアンスを強調します。たいてい、意図しない出来事ややっかい事が起こってしまうことを表わします。"verge"の意味は「道路などの端、縁、へり」です。
【例文】:The cherry tree is on the verge of falling down.
【和訳】:その桜の樹は今にも倒れそうだ。
→いつ倒れてもおかしくない
【例文】:Our company is on the verge of bankruptcy.
【和訳】:我社は倒産寸前である。
→いつ倒産してもおかしくない、「on the verge of + 名詞」も可能
"on the edge of"や"on the blink of"もほぼ同じ意味を表わします。
【例文】:The cherry tree is on the edge of falling down.
【例文】:The cherry tree is on the blink of falling down.
(= The cherry tree is on the verge of falling down.)
【和訳】:その桜の樹は今にも倒れそうだ。
【例文】:Our company is on the edge of bankruptcy.
【例文】:Our company is on the blink of bankruptcy.
(= Our company is on the verge of bankruptcy.)
【和訳】:我社は倒産寸前である。
be on the point of 〜ing(今にも〜しそうだ)
未来を未来時制以外で表わす(7)
↑
ごく近い未来に物事が起こるニュアンスを強調します。「be about to不定詞」や「be on the verge of 〜ing」よりもいっそう切迫した感じです。
【例文】:The cherry tree is on the point of falling down.
【和訳】:その桜の樹はもう今にも倒れそうだ。
→次の瞬間にも倒れそうだ
【例文】:The two cats growling over there are on the point of fighting.
【和訳】:向こうでウーウー唸っている二匹の猫は、今にも取っ組み合いを始めそうだ。
→次の瞬間に猫パンチが飛ぶだろう
【例文】:The man on the point of drowning was rescued.
【和訳】:もう少しで溺れるところだった男性は救助された。
→溺死する寸前だった、「名詞 + on the point of ing形」も可能
be due to不定詞(予定は〜である、〜の見込みだ)
未来を未来時制以外で表わす(8)
↑
すでに実行が決まっている予定や日程、計画などを表わします。
【例文】:The game is due to restart when the rain stops.
【和訳】:雨が止み次第試合は再開予定です。
→予定では止んだらすぐに試合再開
【例文】:The next bus is due to arrive at ten o'ckock.
【和訳】:次のバスは十時ちょうどに到着予定だ。
→運行表によれば次は十時に来る
「be due for + 名詞」の形も可能です。
【例文】:The sequel to the film is due for release next year.
【和訳】:映画の後編は来年公開予定です。
→後編の公開予定は来年、"release"は名詞
現在完了時制は一体いつの話なのか
『動作』を表わす動詞(動作動詞)と『状態』を表わす動詞(状態動詞)に分けてニュアンスの違いをまとめます。
『動作』を表わす動詞の場合
「現在完了時制」って一体いつの話?(1)
↑
現在完了時制も過去時制も過去に起こった物事について語ります。ただし、物の見方には微妙な違いがあります。
『動作』を表わす動詞を現在完了時制で使うと、過去の話だけど具体的にいつのことなのかは限定しません。常に、「今までに〜、これまでに〜、かつて〜」のニュアンスを含みます。
日本語の場合
「現在完了時制」って一体いつの話?:『動作』を表わす動詞の場合(1)
↑
まず日本語で考えると、昔の話をする場合、「あの時に〜した」と「今までに〜したことがある」の二つの話し方があります。
【例文1】:「あの時に〜した」→「昨日試験があった、十日前に雪が降った、去年インドを旅した、645年に大化の改新が行なわれた
【例文2】:「今までに〜したことがある」→「試験を受けたことがある、雪が降ったことがある、インドを旅したことがある
「あの時に〜した」では、話題になっている「時」をはっきりと具体的に示します。「昨日、十日前、去年、645年」のように、話題がいつのことなのか明確です。一方、「今までに〜したことがある」では、話題になっている「時」を明示しません。「今までに」というニュアンスが入ると、「昨日、十日前、去年、645年」のように「時」を限定することは論理的に不可能です。
「今までに〜した、かつて〜した、これまでに〜した」には、「いつのことだとは限定しないけど」というニュアンスがすでに込められています。
英語の場合
「現在完了時制」って一体いつの話?:『動作』を表わす動詞の場合(2)
↑
日本語の「あの時に、その時に」のように「時」をはっきりと限定する場合、英語では過去時制を使います。一方、「今までに〜したことがある、かつて〜したことがある、これまでに〜したことがある」のニュアンスを出す場合、英語では現在完了時制を使います。
# 「あの時に〜した」→ 過去時制
# 「今までに〜したことがある」→ 現在完了時制
【例文】:白い虎を見たことがありますか。はい、昨日、サーカスで見ました。
【 × 】:Did you ever see white tigers? Yes, I have seen ones yesterday at the circus.
【 ○ 】:Have you ever seen white tigers? Yes, I saw ones yesterday at the circus.
【例文】の場合、質問の「見たことがありますか」は「昨日見た?」や「去年はどう?」のように「時」を限定しているわけではありません。ニュアンスは「今までに〜したことがあるか?」です。いつのことなのか決めて掛かる話ではないので現在完了時制を使います。
一方、【例文】の「昨日見た」という返答は「時」を「昨日」と限定しています。いつのことなのかはっきりと限定した話なので過去時制を使います。
『状態』を表わす動詞の場合
「現在完了時制」って一体いつの話?(2)
↑
現在完了時制も過去時制も過去に起こった物事について語ります。ただし、物の見方には微妙な違いがあります。
状態動詞を現在完了時制で使うと、今も昔も変わらない『状態』を表わします。なので、その『状態』がいつ始まったのか、特に限定しなくても話としてはOKです。
日本語の場合
「現在完了時制」って一体いつの話?:『状態』を表わす動詞の場合(1)
↑
日本語考えると、昔から続いている『状態』の話をする場合、「いつとは限定せずに昔から〜である」と「あの時から〜である」の二つの話し方になります。違いは、今も続いている『状態』がいつ始まったかを明示するかしないか、です。
【例文1】:「いつとは限定せずに昔から〜である」→「以前から東京に住んでいる、昔から納豆が好きだ、前から猫が嫌いだ」
【例文2】:「あの時から〜である」→「二年前から東京に住んでいる、一人暮しを始めてから納豆が好きになった、子供のころから猫が嫌いだ」
すでに終ってしまった『状態』の話をする場合は、「いつとは限定せずに昔は〜であった」「あの時は〜であった」と表現します。
【例文1】:「いつとは限定せずに昔は〜であった」→「以前は東京に住んでいた、昔は納豆が好きだった、以前は猫が嫌いだった」
【例文2】:「あの時は〜であった」→「二年前は東京に住んでいた、若いころは納豆が好きだった、子供のころから猫が嫌いだった」
英語の場合
「現在完了時制」って一体いつの話?:『状態』を表わす動詞の場合(2)
↑
英語で昔から続いている『状態』の話をする場合、『状態』がいつ始まったのか明示するときもしないときも現在完了時制を使います。
# 「いつとは限定せずに昔から〜である」→ 現在完了時制
# 「あの時から〜である」→ 現在完了時制
【例文】:どれくらい東京に住んでいますか。生まれたときからです。
【 × 】:How long did you live in Tokoy? I lived here since I was born.
【 ○ 】:How long have you lived in Tokoy? I've lived here since I was born.
→今も東京に住んでいるので「過去時制」は不可
【例文】の場合、現在東京に住んでいる人に対しての質問です。東京住まいがどれくらい続いているか、いつからなのかを尋ねています。話題としては、今も昔も変わらない『状態』についての話なので現在完了時制を使います。
状態動詞を過去時制で使うと、すでに終った過去の『状態』を表わします。
# 「いつとは限定せずに昔は〜だった」→ 過去時制
# 「あの時は〜だった」→ 過去時制
【例文】:二年前はどこに住んでいましたか。東京です。
【 × 】:Where have you lived two years ago? I've lived in Tokyo.
【 ○ 】:Where did you live two years ago? I lived in Tokyo.
→今は東京に住んでいないので「現在完了時制」は不可
【例文】の場合、「二年前はどこに住んでいたのか」という質問です。「今現在どこに住んでいるのか」は、話題には出てきていません。あくまで「二年前に住んでいた場所はどこか」です。現在の『状態』とは無関係の過去の話なので過去時制を使います。
「いつのことだ」と時を限定する表現はダメ
現在完了時制では常に「あんなことがあったけどその結果どうなった」をニュアンスとして含みます。話題は過去の物事ですが、焦点は過去から時が経過して現在に至る「時間の流れ全体」にあります→【参照】:『現在完了時制アレコレ:「現在完了時制」って一体いつの話?』
なので、現在完了時制では、"yesterday"や"when"などのように、明確に「あの時だ、この時だ」と過去の一点を決め付ける表現は避けます。現在完了時制に馴染まない表現をまとめます。
【例文】:昨日、近所に雷が落ちました。
【 × 】:Yesterday lightning has hit the ground near our house.
【 ○ 】:Yesterday lightning hit the ground near our house.
→雷が落ちたのは「昨日」なので「過去時制」を使う
【例文】:いつ中国語を学んだのかな。去年、中国留学中に学びました。
【 × 】:When have you learned Chinese? Last year I'v learned it in China.
【 ○ 】:When did you learn Chinese? Last year I learned it in China.
→「いつ〜?」と「去年」は限定された過去なので、過去時制を使う
漠然と「過去」を表わす表現
時を表わす表現の中で現在完了時制によく馴染むものをまとめます→【参照】:『現在完了時制アレコレ:「現在完了時制」って一体いつの話?』
いずれの語句も過去の一点を決め付ける表現ではありません。ある程度、時間的な幅を持たせた表現です。ただし、どの語句にも複数の意味やニュアンスがあり、現在完了時制以外の《時制》で使うこともあります。
【近い過去】:just(ついさっき), recently(最近), lately(最近)
「現在完了時制」によく馴染む語句(1)
↑
【例文】:I've just returned home from a convenience store.
【和訳】:ついさっき、コンビニから帰って来たところだ。
→今は家にいる
【例文】:Recently vegetable prices have increased because of a long rain.
【和訳】:最近、長雨のせいで野菜が高くなった。
→値上りして現在も高値のまま
【例文】:Lately I have had a stomach upset.
【和訳】:最近、胃の調子が悪い。
→調子が悪くなり今も回復していない
【過去のどこか】:ever(これまでに), never(一度も〜ない)
「現在完了時制」によく馴染む語句(2)
↑
【例文】:Have you ever eaten durian? No, I've never eaten it.
【和訳】:今までにドリアンを食べたことありますか。いいえ、一度もありません。
→生まれてこの方食べたことがあるか、いや、ない
【例文】:Have any fishes ever lived in this lake? No, they've never lived here.
【和訳】:かつて、この湖に魚が棲んでいたことがありますか。いいえ、一度もありません。
→今までにいたことがあるか、いや、ない
【漠然と過去】:before(以前)
「現在完了時制」によく馴染む語句(3)
↑
【例文】:I feel I have met you somewhere before.
【和訳】:以前どこかで、あなたに会ったような気がします。
→本人を目の前にしているが、いつ会ったのかは不明
【過去からの継続】:so far(現在まで、今のところ), since 〜(〜以来)
「現在完了時制」によく馴染む語句(4)
↑
【例文】:So far the two countries have kept a good relationship.
【和訳】:両国の友好状態は、今のところ保たれています。
→しばらく友好状態が続いている
【例文】:So far the sea has been calm.
【和訳】:これまでのところ、海の様子は穏やかだ。
→しばらく平穏な状態が続いている
【例文】:Civilization has greatly developed since the Industrial Revolution.
【和訳】:産業革命以降、文明は飛躍的に発達した。
→現在も発達の恩恵が続いている
【例文】:The blackout has continued since the accident at a power plant.
【和訳】:発電所で事故が起こって以来、停電が続いている。
→現在も停電が継続中
【特定の期間】:for 〜(〜の間)
「現在完了時制」によく馴染む語句(5)
↑
【例文】:I haven't seen rainbows for years.
【和訳】:もう何年も虹を見ていない。
→今も見ていない
【例文】:I've lived here for nearly five years.
【和訳】:ここ住むようになってからほぼ五年が経つ。
→今も住んでいる
【完了】:already(すでに、とっくに)
「現在完了時制」によく馴染む語句(6)
↑
【例文】:We've already cleaned our classroom.
【和訳】:教室の掃除はもう終りました。
→今は教室がきれい
【例文】:The national road has already been jammed.
【和訳】:国道はとっくに渋滞している。
→渋滞が始まり、今も継続中
過去や未来も表わす現在時制
現在時制は現在以外を表現することもできます。
過去から現在、未来にまで当てはまる話(〜である、〜するものだ)
「現在時制」のこんな意味(1)
↑
動作動詞の場合、現在時制はいつのことだとは指定しない一般論を表わします。現在進行中の『動作』は現在進行時制で表わします。
【例文】:Cats chase rats.
【和訳】:猫はねずみを獲るものだ。
→現在進行中の動作ではなく、「猫とは一般に〜である」という一般論
【例文】:You can run fast.
【和訳】:君は足が速い。
→今目の前で走っているわけではなく、「いつ走っても君の足は速い」という一般論
状態動詞の場合、現在時制は「昔はそうだったが今は違う」や「今はそうだが将来は違うだろう」といった時間の対比のニュアンスがほとんどなく、いつの時にも当てはまる『状態』を表わします。
【例文】:Mt. Everest is the highest mountain in the world.
【和訳】:エベレストは世界一高い山だ。
→今も昔も世界一高い
【例文】:Siamese cats have blue eyes.
【和訳】:シャム猫は青い目をしている。
→今も昔も目は青い
昔からの習慣的な動作(〜する、〜している)
「現在時制」のこんな意味(2)
↑
現在時制は、以前から現在に至るまで習慣として定期的に繰り返される『動作』を表わします。
always(いつも), usually(たいてい), once a day(一日一回)などの頻度を表わす表現とよく一緒に使います。
【例文】:I usually eat fried egg with soy sauce.
【和訳】:目玉焼きにはいつも醤油をかけて食べます。
→醤油をかけるのは今回だけではなく毎回
【例文】:I go to the dentist for regular checkups once a month.
【和訳】:月に一度、歯医者に行って歯科検診を受けます。
→歯医者に行くのは今月だけではなく毎月
予定としてきっちり決まっている未来(〜する予定だ、予定は〜だ)
「現在時制」のこんな意味(3)
↑
現在時制は、習慣的な動作ではなく、予定を表わすことができます。交通機関の運行や行事、会合などスケジュールに従って動く物事を表わすときによく使います→【参照】:『未来を未来時制以外で表わす:現在時制』
【例文】:We go on a school trip to New Zealand next month.
【和訳】:来月からニュージーランドへ修学旅行だ。
→ニュージーランド行きはスケジュール通りの出来事
【例文】:Air Force One arrives at 8 a.m.
【和訳】:アメリカ大統領専用機は、午前八時に到着予定だ。
→午前八時の到着はスケジュール通りの出来事
進行中の動作以外も表わす現在進行時制
現在進行時制は「現在進行中の動作」以外を表現することもできます。
準備が進行しつつある未来の予定(〜するつもりだ、〜する予定にしている)
「現在進行時制」のこんな意味(1)
↑
現在進行時制は準備が進行しつつある未来の予定を表わします。すでに決定している個人的な予定や計画について話すときによく使います→【参照】:『未来時制アレコレ:未来を未来時制以外で表わす:現在進行時制(〜するつもりだ、〜する予定にしている)』
【例文】:We're getting married next year.
【和訳】:私たちは来年、結婚します。
→結婚に向けて着々と準備中
【例文】:I'm starting to go to cram school next Monday.
【和訳】:次の月曜日から塾に通い始めます。
→塾通いに向けて着々と準備中
嫌になる癖、やめて欲しい習慣(しょっちゅう〜してしまう、いつも〜する)
「現在進行時制」のこんな意味(2)
↑
現在進行時制は自分自身で気になっている癖や習性、迷惑に感じる他人の習慣などを表わします。
今、目の前で進行している出来事ではなく、「いつも〜なんで嫌なものだ」「いつも〜しやがって、やめてくれ」という不平や不満を強調する表現です。
"always(いつも), constantly(絶えず), forever(永遠に), repeatedly(何度も)"などの頻度を表わす表現とよく一緒に使います。
【例文】:I'm always losing my way when I walk around underground shopping malls.
【和訳】:地下街を歩くといつも道に迷ってしまう。
→自分が方向音痴なのはイヤだ
【例文】:My dad is always making a loud noise when he eats noodles.
【和訳】:父さんはいつも麺類を食べるときズルズルと大きな音を立てる。
→上品に静かに食べて欲しいものだ
話し手のやや控え目な態度
「現在進行時制」のこんな意味(3)
↑
現在進行時制は話し手のやや控え目な態度を表わすことがあります。一種の敬語表現です。
三語とも現在進行時制で使うと、他人に対する少し丁寧なお願いや多少控え目な意見表明を表わすことがあります。日本語でも「〜を望む」や「〜であると思う」と断言するよりは、現在進行時制を使って「〜を望んでいます」や「〜であると思っています」と表現するほうが多少丁寧に感じられます。
過去時制や過去進行時制を使えばもっと控え目な態度を表わすことができます→【参照】:『「過去時制」のこんな意味:話し手の控え目な態度』 『「過去進行時制」のこんな意味:話し手のかなり控え目な態度』
【例文a】:I hope you will help me to solve this problem.
【和訳a】:この問題を解くのを手伝って欲しい。
【例文b】:I'm hoping you would help me to solve this problem.
【和訳b】:この問題を解くのを手伝って欲しいのですが。
→"I hope"より"I'm hoping"のほうがやや控え目で丁寧
【例文a】は率直に自分の希望を述べた表現です。現在進行時制の"I'm hoping"を使う【例文b】はやや控え目で丁寧な表現です。【例文b】の"would"は仮定法過去を表わし、もしそうなってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
【例文a】:I think our school is going to reopen next week.
【和訳a】:来週から学校が再開されると思う。
【例文b】:I'm thinking our school is going to reopen next week.
【和訳b】:来週から学校が再開されると思っているのですが。
→"I think"より"I'm thiking"のほうがやや控え目で丁寧
【例文a】は率直に自分の考えを述べた表現です。現在進行時制の"I'm thinking"を使う【例文b】はやや控え目で丁寧な表現です。
【例文a】:I wonder if anyone will recognize where this picture was taken?
【和訳a】:この写真がどこで撮られたかわかる方はいませんか。
【例文b】:I'm wondering if anyone would recognize where this picture was taken?
【和訳b】:この写真がどこで撮られたのかわかる方はいらっしゃいませんか。
→"I wonder"より"I'm wondering"のほうがやや控え目で丁寧
【例文a】は率直にお願いを述べた表現です。現在進行時制の"I'm wondering"を使う【例文b】はやや控え目で丁寧な表現です。【例文b】の"would"は仮定法過去を表わし、もしそうなってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
現在も続く動作以外を表わす現在完了進行形
現在完了進行時制は「過去に始まり現在も続く動作」以外を表現することもできます。
繰り返す動作(昔から何度も〜している)
「現在完了進行時制」のこんな意味(1)
↑
現在完了進行時制は昔から現在に至るまで何回も繰り返し行なっている『動作』を表わします。
【例文】:This bookshop has been having comic books stolen many times.
【和訳】:この本屋は何度もマンガ本を盗まれています。
→昔から現在に至るまで何度も万引きの被害に遭っている
【例文】:I've often have been talking with my friends about our choice of college.
【和訳】:友人とよく進路について話をした。
→昔から現在に至るまで何回も友人に相談した
つい最近終った動作(〜していた)
「現在完了進行時制」のこんな意味(2)
↑
現在完了進行時制は進行ではなく完了の意味を強調して、ずっと続けていたけれどつい最近終了した『動作』を表わします。『動作』は終了したけれど何らかの影響が今でも残っているニュアンスを出します。
【例文】:You've been working hard without lunch. I'm going to buy you a great dinner.
【和訳】:昼飯抜きで一生懸命働いたんだからうまい夕飯をおごるよ。
→今しがた仕事が終ってクタクタの腹ぺこ
【例文】:Since I've been playing a video game, my eyes are dry.
【和訳】:ずっとゲームをしてたから目がショボショボだ。
→さっきまでずっとゲームをしていて目が疲れた
繰り返した動作を表わす過去時制
過去時制は「過去の一回限りの動作」や「その場限りの状態」以外を表現することもできます。
過去に繰り返した動作(よく〜したものだ)
「過去時制」のこんな意味(1)
↑
過去時制は、一回限りの『動作』ではなく、過去に何度も繰り返した『動作』を表わすことがあります。ニュアンスは、意識して「〜しよう」と決めていた『動作』ではなく、無意識のうちに「〜してしまった」です。過去進行時制も似たような意味を表わします→【参照】:『「過去進行時制」のこんな意味:過去に繰り返した動作(よく〜していた、しょっちゅう〜していた)』
たいてい、"always(いつも), often(しばしば), once a day(一日一回), four times a month(月に四回)"のような、頻度を表わす表現と一緒に使います。
【例文】:I was often late for classes when I was a student.
【和訳】:学生時代はよく授業に遅刻したものだ。
→"often"がないと「一回限りの遅刻」
【例文】:I often used to be late for classes when I was a student.
【和訳】:学生時代はよく授業に遅刻したものだ。
→学生のころは何回も遅刻した
過去の習慣的な動作(〜したものだった)
「過去時制」のこんな意味(2)
↑
過去時制は、一回限りの『動作』ではなく、意識的に何度も繰り返した習慣的な『動作』を表わすことがあります。たいてい、過去形の助動詞の"would"や"used"を使います。
"always(いつも), often(しばしば)"のような、頻度を表わす表現と一緒に使うこともあります。
【例文】:I would drink ten cups of coffee a day.
【和訳】:昔は一日に十杯もコーヒーを飲んでいたものだ。
→毎日十杯飲んでいた
【例文】:My father would often get home past midnight.
【和訳】:父さんの帰宅はたいてい真夜中過ぎだった。
→"often, always"などの頻度を表わす副詞が入ることもある
【例文】:I used to get up at 5 a.m. when I went to school by bicycle.
【和訳】:自転車通学をしていたころは毎朝、五時に起きていた。
→毎朝五時起きだった
仮定法過去(〜だとしたら)
「過去時制」のこんな意味(3)
↑
仮定法過去は動詞の過去形を使うので《時制》は「過去」です。ただし、話の内容は「現在の事実に反する仮定の話」なので、意味的には「現在」を表わします→【参照】:『仮定法の時制ってヘンだよね』
【例文】:私があなただったら、正直に話すよ。
【 × 】:If I am you, I'll tell the truth.
【 ○ 】:If I were you, I would tell the truth.
→過去の話ではないが、現在の事実に反する仮定の話なので「仮定法過去」を使う
【例文】:もし恐竜が生きていたら、動物園で見ることができるかもね。
【 × 】:If dinosaurs are alive, we may be able to see them at the zoo.
【 ○ 】:If dinosaurs were alive, we might be able to see them at the zoo.
→過去の話ではないが、現在の事実に反する仮定の話なので「仮定法過去」を使う
話し手の控え目な態度
「過去時制」のこんな意味(4)
↑
過去時制は話し手の控え目な態度を表わすことがあります。一種の敬語表現です。
三語とも過去時制で使うと、他人に対する丁寧なお願いや控え目な意見表明を表わすことがあります。時制は過去でも意味的には現在です。
現在進行時制も控え目な態度を表わすことができます→【参照】:『「現在進行時制」のこんな意味:話し手のやや控え目な態度』
過去進行時制を使えばもっと控え目な態度を表わすことができます→【参照】:『「過去進行時制」のこんな意味:話し手のかなり控え目な態度』
【例文a】:I hope you will join our team.
【和訳a】:あなたが私たちのチームに入ってくれることを希望します。
【例文b】:I hoped you would join our team.
【和訳b】:あなたが私たちのチームに入っていただければと考えております。
→"I hope"より"I hoped"のほうが控え目で丁寧
【例文a】は率直に自分の希望を述べた表現です。過去時制の"I hoped"を使う【例文b】は丁寧な表現です。意味的には現在を表わします。"would"は仮定法過去を表わし、もしそうなってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
【例文a】:I think you are right.
【和訳a】:あなたが正しいと思う。
【例文b】:I thought you would be right.
【和訳b】:あなたが正しいのではないかと思います。
→"I think"より"I thought"のほうが控え目で丁寧
【例文a】は率直に自分の考えを述べた表現です。過去時制の"I thought"を使う【例文b】は丁寧な表現です。意味的には現在を表わします。"would"は仮定法過去を表わし、もしそうなってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
【例文a】:I wonder if you can give me a hand.
【和訳a】:手を貸してくれませんか。
【例文b】:I wondered if you could give me a hand.
【和訳b】:手を貸していただけませんでしょうか。
→"I wonder"より"I wondered"のほうが控え目で丁寧
【例文a】は率直に依頼を述べた表現です。過去時制の"I wondered"を使う【例文b】は丁寧な表現です。意味的には現在を表わします。"could"は仮定法過去を表わし、もしそうなってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
過去の進行中の動作以外も表わす過去進行時制
過去進行時制は過去の進行中の『動作』や『状態』以外を表現することもできます。
過去に繰り返した動作(よく〜していた、しょっちゅう〜していた)
「過去進行時制」のこんな意味(1)
↑
過去進行時制は、進行していた『動作』ではなく、過去に何度も繰り返した『動作』を表わすことがあります。過去時制の過去に繰り返した動作(よく〜したものだ)と比べると、驚きや賞賛、イライラなどの感情表現を強調します。
"always(いつも), constantly(絶えず), forever(永遠に), repeatedly(何度も)"などの頻度を表わす表現とよく一緒に使います。
【例文】:When I was a child, I was always running around outside barefoot.
【和訳】:子供のころはいつも裸足で外を駆けずり回っていました。
→活発で元気な子供だった、意外を表わす
【例文】:Strange things were often happening in the village.
【和訳】:村内では不思議な出来事がしょっちゅう起こっていた。
→不思議な事件が頻発した、不満や疑問を表わす
話し手のかなり控え目な態度
「過去進行時制」のこんな意味(2)
↑
過去進行時制は話し手のかなり控え目な態度を表わすことがあります。一種の敬語表現です。
三語とも過去進行時制で使うと、他人に対する非常に丁寧なお願いやかなり控え目な意見表明を表わすことがあります。時制は過去でも意味的には現在です。
現在進行時制や過去時制も控え目な態度を表わすことができます→【参照】:『「現在進行時制」のこんな意味:話し手のやや控え目な態度』 『「過去時制」のこんな意味:話し手の控え目な態度』
【例文a】:I hope you will be the president of our club.
【和訳a】:私たちのクラブの部長にあなたがなってくれることを希望します。
【例文b】:I was hoping you would be the president of our club.
【和訳b】:私たちのクラブの部長にあなたがなっていただけたらと考えています。
→"I hope"より"I was hoping"のほうがかなり控え目で丁寧
【例文a】は率直に自分の希望を述べた表現です。過去進行時制の"I was hoping"を使う【例文b】はかなり丁寧な表現です。意味的には現在を表わします。"would"は仮定法過去を表わし、もしそうなってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
【例文a】:I think you may know very much about Japanese history.
【和訳a】:あなたは日本史にくわしいかもしれないと思いました。
【例文b】:I was thinking you might very much know about Japanese history.
【和訳b】:もしかするとあなたが日本史におくわしいのではないかと考えさせていただきました。
→"I think"より"I was thinking"のほうがかなり控え目で丁寧
【例文a】は率直に自分の希望を述べた表現です。過去進行時制の"I was hoping"を使う【例文b】はかなり丁寧な表現です。意味的には現在を表わします。"might"は仮定法過去を表わし、もしそうであってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
【例文a】:I wonder if you can email me the pictures of the cake you made.
【和訳a】:あなたが作ったケーキの写真を送ってくれませんか。
【例文b】:I was wondering if you could email me the pictures of the cake you made.
【和訳b】:あなたが作ったケーキの写真を送っていただけませんでしょうか。
→"I wonder"より"I was wondering"のほうがかなり控え目で丁寧
【例文a】は"I wonder if"を使う丁寧な依頼の表現です。過去進行時制の"I was wondering"を使う【例文b】はさらに丁寧な表現です。意味的には現在を表わします。"could"は仮定法過去を表わし、もしそうなってくれればという控え目なニュアンスをさらに強調します。
過去の過去以外を表わす過去完了時制
過去完了時制は、昔のそのまた昔の『動作』や『状態』以外を表現することもできます。
実現しなかった期待や希望や計画
「過去完了時制」のこんな意味(1)
↑
過去完了時制は外れた予想やかなわなかった希望、意図などを表わすことがあります。
いずれの動詞も過去完了時制の肯定文で使うとニュアンスは「〜だと思ったが現実は違った、〜のつもりがだめだった」です。過去完了時制の否定文で使うとニュアンスは逆になり「〜はだめだと思っていたけど現実はうまくいった」です。
【予想】:expect(〜だろうと予想する), suppose(〜だろうと思う), think(〜だろうと思う)
過去完了時制で「外れた予想やかなわなかった希望、意図」を表わす主な動詞(1)
↑
三語とも過去完了時制で使うと過去の予想とは正反対の現実を表わすことがあります。
【例文】:I had expected the tickets would sell out.
【和訳】:チケットは完売すると予想していました。(実際は完売しなかった)
→"had expected"(過去完了時制)は外れた予想を表わす
【例文】:We hadn't expected that we would win that team.
【和訳】:あのチームに勝てるとは思ってもみませんでした。(実際は勝つことができた)
→"hadn't expected"(過去完了時制)は外れた予想を表わす
【例文】:My parents had supposed I would be involved in the bus accident.
【和訳】:両親は私がバスの事故に巻き込まれたと思っていました。(実際は巻き込まれていない)
→"had supposed"(過去完了時制)は外れた予想を表わす
【例文】:I had thought the shop would be open.
【和訳】:お店は開いていると思いました。(実際は閉まっていた)
→"had thought"(過去完了時制)は外れた予想を表わす
【希望】:hope(〜を希望する), want(〜を望む)
過去完了時制で「外れた予想やかなわなかった希望、意図」を表わす主な動詞(2)
↑
二語とも過去完了時制で使うと実現しなかった希望を表わすことがあります。
【例文】:Smith had hoped to go back to work this week, but it won't be possible.
【和訳】:スミスは今週職場に復帰するつもりだったが無理なようだ。
→"had hoped"(過去完了時制)は実現が困難な希望を表わす
【例文】:I had wanted to study in the US, but I didn't.
【和訳】:アメリカに留学したかったがダメだった。
→"had wanted"(過去完了時制)は実現しなかった希望を表わす
【意図】:intend(〜するつもりだ), mean(〜するつもりだ)
過去完了時制で「外れた予想やかなわなかった希望、意図」を表わす主な動詞(3)
↑
二語とも過去完了時制で使うと実現しなかった意図を表わすことがあります。
【例文】:I had intended to get my driving licence during the summer vacation.
【例文】:I had meant to get my driving licence during the summer vacation.
【和訳】:運転免許は夏休み中に取るつもりでした。(取れなかった)
→"had intended/had meant"(過去完了時制)は実現しなかった意図を表わす
【例文】:I hadn't intended to sleep so long.
【例文】:I hadn't meant to sleep so long.
【和訳】:長時間寝るつもりはありませんでした。(かなり長時間寝てしまった)
→"had intended/had meant"(過去完了時制)は実現しなかった意図を表わす
仮定法過去完了
「過去完了時制」のこんな意味(2)
↑
仮定法過去完了は過去完了時制を使って表現します。ただし、話の内容は「過去の事実に反する仮定の話」なので、過去の過去ではなく、意味的には「過去」を表わします→【参照】:『仮定法の時制ってヘンだよね:仮定法過去完了の場合』
【例文】:避難訓練を受けていなかったら逃げ遅れた人がいたかもしれない。
【 × 】:If we had not evacuation drills, some of us might fail to evacuate.
【 ○ 】:If we had not had evacuation drills, some of us might have failed to evacuate.
→過去のさらに過去の話ではないが、過去の事実に反する仮定の話なので「仮定法過去完了」を使う
【例文】のニュアンスは、私たち全員が何度も避難訓練を受けていたので、いざという時に全員無事に避難できた、です。
【例文】:奨学金がなかったら私は大学で学ぶことはできませんでした。
【 × 】:Without the scholarship I wouldn't be able to study at college.
【 ○ 】:Without the scholarship I wouldn't have been able to study at college.
→過去のさらに過去の話ではないが、過去の事実に反する仮定の話なので「仮定法過去完了」を使う
【例文】のニュアンスは、私は奨学金を充分もらったので大学に通って勉強することができた、です。
過去時制が文を支配する
英語の「時制の一致」についてまとめます。日本語ではほとんど意識しない文法ルールなので、英作文では特に間違えやすいポイントです。
会話文での「時制の一致」(【例】:You said , "I like cats." → You told me that you liked cats.)は「会話の表現の時制」で扱います。ここでは主に会話文以外(【例】:I thought you were right.)のような場合を扱います。
動詞の時制を文法的に変更すること
「時制の一致」とは、現在形や未来形の動詞や助動詞を、文法上の決まりに従って過去形や過去完了形に変更することを指します。
【例文】:野党は消費税を上げないと約束した。
【 × 】:The Opposition promised that they will not raise consumption tax.
【 ○ 】:The Opposition promised that they would not raise consumption tax.
【例文】の日本語は過去の話です。野党が約束したのは昔のことです。【例文】を英訳すると、"will"ではなく過去形の"would"を使います。
このように、文全体の《時制》に合わせてほかの動詞の《時制》を未来や現在から過去や過去完了に変更することを「時制の一致」と言います。
日本語は「現在時制」で過去を表現可能
なぜ「時制の一致」なんかするの?(1)
↑
日本語では、過去の物事を「〜だと思った」と表現するとき、思った内容の《時制》は現在でもOKです。一方、英語では、過去の物事を「〜だと思った」と表現するとき、思った内容を現在時制で表現するのは文法的にたいてい不可です。
たとえば、「学食は満員だと思った」と話すとき、日本語では過去のことだけど「満員だ」と現在時制で表現します。一方、英語では"the cafeteria was full"と過去時制を使います。現在時制を使う"the cafeteria is full"は原則として文法的に不可。
【例文】:学食は満員だと思った。
【 × 】:I thought that the cafeteria is full.
【 ○ 】:I thought that the cafeteria was full.
→"is"は文法的に不可
英語は「過去時制」に縛られる
なぜ「時制の一致」なんかするの?(2)
↑
日本語は文の最後で「〜した」「〜だった」と過去時制を使えば、ほかの部分は特に過去時制に縛られることなく、現在時制や未来時制も制限なく使うことができます。
一方、英語は文の最初で"I thought"と過去時制を使うと、あとに続く部分は過去時制に縛られて現在時制は原則として不可です。
【例文】:あなたは宿題を手伝ってくれると言いました。
【 × 】:You told me that you will help me with my homework.
【 ○ 】:You told me that you would help me with my homework.
→日本語は「手伝ってくれる」(現在時制)、英語は"would help"(過去時制)
【例文】を英訳する場合、"will"は文法的に不可。過去形の"would"を使います。このように、英語では過去時制に縛られてほかの動詞や助動詞の《時制》を現在や未来から過去や過去完了に変更します。
日本語では「時制の一致」が不要
「時制の一致」は日本語には存在しない(1)
↑
日本語には英語で使うような「時制の一致」という概念は特に存在しません。過去の話の中に現在時制の動詞を使うことはしょっちゅうです→【参照】:『時制の一致……なぜ「時制の一致」なんかするの?』
逆に、過去の話の中で動詞を過去形にすると、まったく別の意味を表わすことさえあります。
【例文】:昨日、あなたはトイプードルを飼っていると話していました。
【 × 】:Yesterday you told me that you have a toy poodle.
【 ○ 】:Yesterday you told me that you had a toy poodle.
→「今日」の時点でトイプードルは飼っている
【例文】:昨日、あなたはトイプードルを飼っていたと話していました。
【 × 】:Yesterday you told me that you had a toy poodle.
【 ○ 】:Yesterday you told me that you had had a toy poodle.
→「今日」も「昨日」もすでにトイプードルは飼っていない
二つの日本語の【例文】の違いは「飼っている」と「飼っていた」だけですが、意味はまったく異なります。
日本語の場合、「〜と話した」や「〜と思った」の話をするとき、「話した」「思った」ことの内容は現在時制の「飼っている」で表わします。つまり、過去に「〜と話した」「〜と思った」時点に自分を移動させて、当時の出来事が今起こっているかのように話を進めます。なので、「〜と話した」「〜と思った」時点よりさらに過去の話をするときに初めて過去時制の「飼っていた」を使います。
英語の場合、「〜と話した」や「〜と思った」の話をするとき、「話した」「思った」ことの内容は過去時制の"had"で表わします。英語では過去のことは一括して過去の出来事と見なします。「〜と話した」「〜と思った」過去に自分を移動させて当時を「今」と考えるようなことは原則としてしません。「〜と話した」「〜と思った」時点よりさらに過去の話をするときは、過去のさらに過去なので過去完了時制の"had had"を使います。
引用符("")ありの会話文
「時制の一致」は日本語には存在しない(2) ↑英語の場合、引用符("")ありの会話文では過去の会話を当時のまま再現するので、文全体の《時制》が過去でも引用符("")の中の会話部分は現在時制を使います。
【例文】:昨日、あなたはトイプードルを飼っていると話していました。
【 ○ 】:Yesterday you said, "I have a toy poodle."
(= Yesterday you said that you had a toy poodle.)
→会話が行われたのは過去だけど"have"を使う
引用符("")の中の"I have a toy poodle"は現在時制です。日本語の《時制》の感覚とほぼ同じです。会話文での「時制の一致」(【例】:You said , "I like cats." → You told me that you liked cats.)は会話の表現の時制で扱います。
時制が現在、現在完了、未来のときに「時制の一致」は不要
文全体の《時制》が現在や現在完了や未来の場合、「時制の一致」を特に意識する必要はありません。日本語とほぼ同じ感覚です。
文全体が現在時制
時制の一致(4)「時制の一致」が不要な場合(1)
↑
文全体の《時制》が現在の場合、「時制の一致」は不要です。
【例文】:I think that a plane usually arrives on time.
【和訳】:飛行機はたいてい予定通りに到着すると思います。
【例文】:I think that the plane arrived on time.
【和訳】:その飛行機は予定通りに到着したと思います。
【例文】:I think that the plane has just arrived on time.
【和訳】:その飛行機は予定通りに今しがた到着したと思います。
【例文】:I think that the plane will arrive on time.
【和訳】:その飛行機は予定通りに到着するだろうと思います。
【例文】は四つとも"I think"で始まるので文全体の《時制》は現在です。しかし、動詞の"arrive"の《時制》は現在とは限りません。これは英語でも日本語でも同じです。
"arrive"は飛行機が現在、過去、未来において到着する様子を表わして、現在形(arrive)、過去形(arrived)、現在完了形(have arrived)、未来形(will arrive)と変化します。現在時制の"think"に縛られずに、自由に《時制》を変化させることができます。
日本語の「到着する」も飛行機が現在、過去、未来において到着する様子を表わして、現在形(到着する)、過去形(到着した)、現在完了形(到着した)、未来形(到着するだろう)と変化します。現在時制の「思います」に縛られずに、自由に《時制》を変化させることができます。
文全体が現在完了時制
時制の一致(4)「時制の一致」が不要な場合(2)
↑
文全体の《時制》が現在完了の場合、「時制の一致」は不要です。
【例文】:I have found that this summer is unusually hot.
【和訳】:今年の夏が猛暑であることに気づいた。
【例文】:I have found that this summer was unusually hot.
【和訳】:今年の夏が猛暑だったことに気づいた。
【例文】:I have found that this summer has been unusually hot.
【和訳】:もうすぐ終る今年の夏が猛暑だったことに気づいた。
【例文】:I have found that this summer will be unusually hot.
【和訳】:今年の夏が猛暑になるだろうことに気づいた。
be動詞は現在、過去、未来の夏の気候を表わして、現在形(is)、過去形(was)、現在完了形(has been)、未来形(will be)と変化します。現在完了時制の"have found"に縛られずに、自由に《時制》を変化させることができます。
日本語の「である」も現在、過去、未来の夏の気候を表わして、現在形(である)、過去形(だった)、現在完了形(だった)、未来形(になるだろう)と変化します。現在完了時制の「気づいた」に縛られずに、自由に《時制》を変化させることができます。
文全体が未来時制
時制の一致(4)「時制の一致」が不要な場合(3)
↑
文全体の《時制》が未来の場合、「時制の一致」は不要です。
【例文】:The media will report that the Prime Minister resigns.
【和訳】:マスコミは首相が辞任すると報道するだろう。
【例文】:The media will report that the Prime Minster resigned.
【和訳】:マスコミは首相が辞任したと報道するだろう。
【例文】:The media will report that the Prime Minster has just resigned.
【和訳】:マスコミは首相が今しがた辞任したと報道するだろう。
【例文】:The media will report that the Prime Minster will resign.
【和訳】:マスコミは首相が辞任するだろうと報道するだろう。
【例文】は四つとも"The media will report"で始まるので、文全体の《時制》は未来です。しかし、動詞の"resign"の《時制》は現在とは限りません。これは英語でも日本語でも同じです。
"resign"は首相が現在、過去、未来において辞任する様子を表わして、現在形(resigns)、過去形(resigned)、現在完了形(has regined)、未来形(will resign)と変化します。未来時制の"will report"に縛られずに、自由に《時制》を変化させることができます。
日本語の「辞任する」も首相が現在、過去、未来において辞任する様子を表わして、現在形(辞任する)、過去形(辞任した)、現在完了形(辞任した)、未来形(辞任するだろう)と変化します。未来時制の「〜するだろう」に縛られずに、自由に《時制》を変化させることができます。
現在 → 過去、過去 → 過去完了
文の中に動詞が一つのみならば、「時制の一致」を考える必要がありません。「時制の一致」とは、文全体の過去時制に縛られてほかの動詞や助動詞の《時制》を過去や過去完了に変更することです→【参照】:『時制の一致……なぜ「時制の一致」なんかするの?』
文全体の《時制》が過去時制のとき、文の中に二つ以上の動詞や助動詞があれば、たいてい「時制の一致」が必要です。"I thought"を使って「時制の一致」の実例をまとめます。
過去時制 + 過去時制
時制の一致(5)「時制の一致」のやり方(1)
↑
【例文】:その飛行機は予定通りに到着すると思った。
【 × 】:I thought that the plane arrives on time.
【 ○ 】:I thought that the plane arrived on time.
「思った」のは過去のことですが、飛行機の到着は日本語では「到着する」と現在時制で表現します。一方、英語では「思った」の過去時制に合わせて飛行機の到着を"arrived"と過去時制で表現します。
【例文】:その飛行機は予定通りに到着するだろうと思った。
【 × 】:I thought that the plane will arrive on time.
【 ○ 】:I thought that the plane would arrive on time.
「思った」のは過去のことですが、飛行機の到着は日本語では「到着するだろう」と未来時制で表現します。一方、英語では「思った」の過去時制に合わせて飛行機の到着を"would arrive"と過去時制で表現します。"will"ではなく過去形の"would"を使うのがミソです。
過去時制 + 過去完了時制
時制の一致(5)「時制の一致」のやり方(2)
↑
【例文】:その飛行機は予定通りに到着したと思った。
【 × 】:I thought that the plane arrived on time.
【 ○ 】:I thought that the plane had arrived on time.
「思った」のは過去のことですが、飛行機の到着は「思った」よりもさらに過去のことです。なので、日本語では「到着した」と過去時制で表現します。一方、英語では過去のさらに過去の話なので、過去完了時制で"had arrived"と表現します。
【例文】:その飛行機は予定通りに今しがた到着したと思った。
【 × 】:I thought that the plane has just arrived on time.
【 ○ 】:I thought that the plane had just arrived on time.
「思った」のは過去のことですが、飛行機の到着は「思った」よりもさらに過去のことです。なので、日本語では「到着した」と過去時制で表現します。一方、英語では過去のさらに過去の話なので、過去完了時制で"had arrived"と表現します。
"think"(思う)や"say"(言う)と似た意味の動詞
「時制の一致」は過去時制の文の中に動詞や助動詞が二つ以上出て来るときに使います→【参照】:『「時制の一致」のやり方』
時制の一致を使う動詞
時制の一致(6)「時制の一致」を使う動詞とその文型(1)
↑
「時制の一致」を使う動詞は人の発言を表わす"say"や"tell"のほかに、人の思考を表わす"think"や"believe"など目的語にthat節やwhat節などを取るものがほとんどです。過去時制で「時制の一致」が必要になる動詞とその文型をまとめます。
いずれの動詞も目的語にthat節やwhat節などを取ることができます。that節やwhat節を使うと一つの文の中で二つ目の動詞や助動詞が出て来るので、文全体の過去時制に縛られた「時制の一致」を適用します。
"tell"や"complain"などを使う会話文での「時制の一致」(【例】:You said , "I like cats." → You told me that you liked cats.)は会話の表現の時制で扱います。
that節の場合
時制の一致(6)「時制の一致」を使う動詞とその文型(2)
↑
文全体の《時制》が過去で目的語がthat節の場合、that節にも動詞や助動詞が出てくるので、たいてい「時制の一致」が必要です。
【例文】:学級委員長にはあなたがもっともふさわしいと感じました。
【 × 】:I felt that you are the best person for our class representative.
【 ○ 】:I felt that you were the best person for our class representative.
→過去時制の"felt"に縛られて"were"を使う
【例文】:研究によれば地球温暖化は年々進行している。
【 × 】:The study found that global warming is advancing year by eyar.
【 ○ 】:The study found that global warming was advancing year by year.
→過去時制の"found"に縛られて"was advancing"を使う
【例文】:転校することを誰かに話しましたか。
【 × 】:Did you tell anyone that you are transferring to another school?
【 ○ 】:Did you tell anyone that you were transferring to another school?
(= Did you say to anyone, "I am transferring to another school?")
→過去時制の"did"に縛られて"was transferring"を使う
【例文】:転校する予定だったことを誰かに話しましたか。
【 × 】:Did you tell anyone that you were transferring to another school?
【 ○ 】:Did you tell anyone that you had been transferring to another school?
(= Did you say to anyone, "I was transferring to another school?")
→過去時制の"did"に縛られて"had been transferring"を使う
「転校する予定だった」は「話した」よりも昔のことなので、過去のさらに過去を表わす過去完了進行時制を使います。
【例文】:電気料金の値上げは不必要であると我々は主張した。
【 × 】:We argued that the increase of electricity price is unnecessary.
【 ○ 】:We argued that the increase of electricity price was unnecessary.
→過去時制の"argued"に縛られて"was"を使う
【例文】:電気料金の値上げは不必要だったと我々は主張した。
【 × 】:We argued that the increase of electricity price was unnecessary.
【 ○ 】:We argued that the increase of electricity price had been unnecessary.
→過去時制の"argued"に縛られて"had been"を使う
「不必要だった」のは「主張した」よりさらに昔のことなので、過去のさらに過去を表わす過去完了時制を使います。
【例文】:ボランティア活動の一環として私たちのクラスは献血することを決めました。
【 × 】:Our class decided that we will donate blood as a volunteer activity.
【 ○ 】:Our class decided that we would donate blood as a volunteer activity.
→過去時制の"decided"に縛られて"would donate"を使う
what節やwhere節などの場合
時制の一致(6)「時制の一致」を使う動詞とその文型(3)
↑
文全体の《時制》が過去で目的語がwhat節やwhere節などの場合、what節やwhere節などにも動詞や助動詞が出てくるので、たいてい「時制の一致」が必要です。
【例文】:この漢字の意味は知らなかった。
【 × 】:I didn't know what this character mean.
【 ○ 】:I didn't know what this character meant.
→過去時制の"didn't"に縛られて"meant"を使う
【例文】:自分の車をだだっ広い駐車場のどこに停めたのかやっとのことで思い出した。
【 × 】:I finally remembered where I parked my car at the vast car park.
【 ○ 】:I finally remembered where I had parked my car at the vast car park.
→過去時制の"remembered"に縛られて"had parked"を使う
「停めた」のは「思い出した」のよりさらに昔のことなので、過去のさらに過去を表わす過去完了時制を使います。
【例文】:先生は私にどこの大学に行きたいのか尋ねた。
【 × 】:The teacher asked me which college I want to go to.
【 ○ 】:The teacher asked me which college I wanted to go to.
→過去時制の"asked"に縛られて"wanted"を使う
【例文】:あなたが誰のことを話しているのかわからなかった。
【 × 】:I didn't understand who you are talking about.
【 ○ 】:I didn't understand who you were talking about.
→過去時制の"didn't"に縛られて"were talking"を使う
【例文】:男性はどうやって火砕流から逃れたか話してくれた。
【 × 】:The man told us how he escaped from the pyroclastic flow.
【 ○ 】:The man told us how he had escaped from the pyroclastic flow.
→過去時制の"told"に縛られて"had escaped"を使う
「逃れた」のは「話してくれた」のよりさらに昔のことなので、過去のさらに過去を表わす過去完了時制を使います。
そのままの形で使う
助動詞の"will, can, may"には過去形があるので「時制の一致」を使うときは、"will → would", "can → could", "may → might"と変化させます。
【例文】:あした東京へ出張だ、と父さんが言った。
【 × 】:My father said that he will go to Tokyo for work the next day.
【 ○ 】:My father said that he would go to Tokyo for work the next day.
(= My father said, "I will go to Tokyo for work tomorrow.")
過去形が存在しない助動詞の"must, ought, need"はそのままの形で使います。"must"の意味が「〜しなければならない」のときは"had to"も使えます。
# 時制の一致でもそのままの形で使う助動詞……must, ought, need
【例文】:村の人々はもっと高くて安全な場所に避難しなければと考えた。
【英訳】:Villagers thought they must evacuate to higher and safer places.
【英訳】:Villagers thought they had to evacuate to higher and safer places.
→"must"は過去形がないのでそのまま使うか"had to"を使う
【例文】:医者からはすぐにたばこを止めるべきだと忠告を受けました。
【英訳】:The doctor advised me that I ought to quit smoking immediately.
→"ought"は過去形がないのでそのまま使う
【例文】:あなたが謝る必要はないと思った。
【英訳】:I didn't think that you need apologize.
→"need"は過去形がないのでそのまま使う
過去時制の縛りが無くなるとき
文全体の《時制》が過去でも、ほかの動詞の《時制》を変化させずに現在時制や過去時制のままにしておくことがあります。
現在でも有効な話や出来事……現在時制で通すこともある
時制の一致(8)「時制の一致」はしないこともある(1)
↑
すでに起こった過去の出来事だけど話をしている現在でも有効であるときは、「時制の一致」を使わずに、現在時制のままで表現することもあります。ただし、英作文では「時制の一致」を適用して、過去時制にしておくのが無難です。
【例文】:その絵が偽物であることに気づいた。
【 △ 】:I noticed that the painting is fake.
【 ○ 】:I noticed that the painting was fake.
→話をしている現在でも絵が偽物である事実は変わらない
絵が偽物であるという事実は現在でも有効なので現在時制も使えます。しかし、「気づいた」の過去時制に合わせて"was"を使うほうが無難です。
【例文】:海岸沿いの道路のいくつかは土砂崩れのため通行止めと聞きました。
【 △ 】:I heard that some roads along the coast are closed due to landslides.
【 ○ 】:I heard that some roads along the coast were closed due to landslides.
→話をしている現在も通行止めが続いている
道路が通行止めである事実は現在でも有効である場合、現在時制も使えます。しかし、「聞きました」の過去時制に合わせて"were"を使うほうが無難です。
不変の事実……現在時制で通すこともある
時制の一致(8)「時制の一致」はしないこともある(2)
↑
科学の法則や現象などのように、現在、過去、未来を通じて動かせない不変の事実は「時制の一致」を使わずに現在時制のままで表現することもあります。ただし、英作文では「時制の一致」を適用して、過去時制にしておくのが無難です。
【例文】:地球には月という衛星が一つあると先生は教えてくれた。
【 △ 】:The teacher taught us that the Earth has one satellite called the moon.
【 ○ 】:The teacher taught us that the Earth had one satellite called the moon.
地球の衛星は月一つという事実は現在、過去、未来に渡って不変なので現在時制も使えます。しかし、「教えてくれた」の過去時制に合わせて"had"を使うほうが無難です。
【例文】:実験を通して、水素は酸素より軽いことが理解できました。
【 △ 】:Through the experiment, we understood that hydrogen is lighter than oxygen.
【 ○ 】:Through the experiment, we understood that hydrogen was lighter than oxygen.
水素は酸素より軽いという事実は現在、過去、未来に渡って不変なので現在時制も使えます。しかし、「教えてくれた」の過去時制に合わせて"was"を使うほうが無難です。
歴史的に有名な事実や事件……過去時制で固定
時制の一致(8)「時制の一致」はしないこともある(3)
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たとえば、「第二次世界大戦は1939年に始まった」「ノーベルがダイナマイトを発明した」などの歴史的に有名な事実は、過去時制で固定します。過去のさらに過去の話でも過去完了時制は使いません。
【例文】:第二次世界大戦は1939年に始まったと学校で習った。
【 × 】:I learned in school that the World War II had started in 1939.
【 ○ 】:I learned in school that the World War II started in 1939.
第二次世界大戦が始まったのは、高校で習った時期よりもさらに昔ですが、過去完了時制は使いません。歴史的に有名な事実は過去の出来事として過去時制のままでOKです。
【例文】:スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルがダイナマイトを発明したと習いました。
【 × 】:I was taught that the Swedish chemist Alfred Nobel had invented dynamite.
【 ○ 】:I was taught that the Swedish chemist Alfred Nobel invented dynamite.
ダイナマイトの発明は私が習った時期よりはるかに昔ですが、過去完了時制は使いません。歴史的に有名な事実は過去の出来事として過去時制のままでOKです。
仮定法現在……時制は変更しない
時制の一致(8)「時制の一致」はしないこともある(4)
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仮定法現在は原則として「時制の一致」を使わず、現在時制のまま使います。
動詞が"suggest + that + 〜"や"propose + that + 〜"の場合、"that"以下は「これから〜してはどうか」という「仮定の話」なのでたいてい動詞は原形を使い、仮定法現在を使います→【参照】:『"if"を使わない仮定法アレコレ:「提案」を表わす動詞(suggest, propose, advise, recommend)』
仮定法現在を表わす動詞の《時制》は「時制の一致」の影響を受けず、現在形のままで使います。
【例文】:被災地の人々にタオルを送ろうと提案したのはあなただと思った。
【 △ 】:I thought you suggested that we sent towels to the people in disaster areas.
【 ○ 】:I thought you suggested that we send towels to the people in disaster areas.
"send"は仮定法現在を表わすためにわざと"send"のままにしています。仮定法現在の場合、文全体の時制が過去時制だろうと過去完了時制だろうと、原則として"send"のまま使います。
仮定法過去……時制は変更しない
時制の一致(8)「時制の一致」はしないこともある(5)
↑
仮定法過去は「時制の一致」を使わず、過去時制のまま使います。
【例文】:もし私があなたなら、本当のことを話すだろうと思いました。
【 × 】:I thought that if I had been you, I would have told the truth.
【 ○ 】:I thought that if I were you, I would tell the truth.
"would tell"は仮定法過去なので《時制》は過去のままで変更しません。
【例文】の文全体の《時制》は過去です。本来、過去の事実に反する仮定は、仮定法過去ではなく、仮定法過去完了で表現します。しかし、"I thought"や"You told"などに続くときは、《時制》を変更せずに仮定法過去のままで使います→【参照】:『仮定法の時制ってヘンだよね』
仮定法過去完了……時制は変更しない
時制の一致(8)「時制の一致」はしないこともある(6)
↑
仮定法過去完了は「時制の一致」を使わず、過去完了時制のまま使います。
【例文】:朝御飯抜きだったらお腹が空いてテストに集中できなかっただろうと思った。
【英訳】:I thought that hunger would have prevented me from concentrating on the test if I hadn't had breakfast.
仮定法過去完了は必ず過去完了時制を使って「過去の事実に反する仮定」を表わします。なので、文全体の時制が現在時制であろうと過去時制であろうと、仮定法過去完了の時制は一切変化させません。
時制を表わす助動詞の並び順
主語の次に並ぶ《時制》を表わす助動詞の並び順には決まりがあります。平叙文の一覧をまとめます。
平叙文の能動態の場合
時制を表わす助動詞の並び順(1)
↑
主語の次に並ぶ《時制》を表わす助動詞の数は能動態の場合で最大三つです。この並び順には決まりがあります。平叙文の一覧をまとめます。
時制 | 並び順 | 例文 |
---|---|---|
現在 | [主語] + [現在形] | I drink tea. |
現在進行 | [主語] + am/is/are + [ing形] | I am drinking tea. |
現在完了 | [主語] + have/has + [過去分詞] | I have drunk tea. |
現在完了進行 | [主語] + have/has + been + [ing形] | I have been drinking tea. |
過去 | [主語] + [過去形] | I drank tea. |
過去進行 | [主語] + was/were + [ing形] | I was drinking tea. |
過去完了 | [主語] + had + [過去分詞] | I had drunk tea. |
過去完了進行 | [主語] + had + been + [ing形] | I had been drinking tea. |
未来 | [主語] + will + [現在形] | I will drink tea. |
未来進行 | [主語] + will + be + [ing形] | I will be drinking tea. |
未来完了 | [主語] + will + have + [過去分詞] | I will have drunk tea. |
未来完了進行 | [主語] + will + have + been + [ing形] | I will have been drinking tea. |
平叙文の受動態の場合
時制を表わす助動詞の並び順(2)
↑
主語の次に並ぶ《時制》を表わす助動詞の数は受動態の場合で最大四つです。この並び順には決まりがあります。平叙文の一覧をまとめます。
時制 | 並び順 | 例文 |
---|---|---|
現在 | [主語] + am/is/are + [過去分詞] | Tea is drunk. |
現在進行 | [主語] + am/is/are + being + [過去分詞] | Tea is being drunk. |
現在完了 | [主語] + have/has + been + [過去分詞] | Tea has been drunk. |
現在完了進行 | [主語] + have/has + been + being + [過去分詞] | Tea has been being drunk. |
過去 | [主語] + was/were + [過去分詞] | Tea was drunk. |
過去進行 | [主語] + was/were + being + [過去分詞] | Tea was being drunk. |
過去完了 | [主語] + had + been + [過去分詞] | Tea had been drunk. |
過去完了進行 | [主語] + had + been + being + [過去分詞] | Tea had been being drunk. |
未来 | [主語] + will + be + [過去分詞] | Tea will be drunk. |
未来進行 | [主語] + will + be + being + [過去分詞] | Tea will be being drunk. |
未来完了 | [主語] + will + have + been + [過去分詞] | Tea will have been drunk. |
未来完了進行 | [主語] + will + have + been + being + [過去分詞] | Tea will have been being drunk. |